
「Scratchでひととおり作れるようになったみたいなのですが、次は何をやらせればいいのでしょうか」。イベント会場で保護者の方からいちばんよく聞かれる質問のひとつです。
先に結論を書きます。Scratchの次に進む道は、大きく3つしかありません。テキストで書くプログラミング言語に移る、Scratchのまま作るものを重くする、画面の外にある物を動かす。この3つです。そして、どれを選ぶかは子どもの習熟度ではなく、その子がScratchの何を面白がっていたかで決まります。
もうひとつ、あまり言われないことも書いておきます。「次」を急いで用意しなくていい場合が、実際にはかなりあります。この記事では、3つの選択肢を比べたうえで、進まないほうがいい場合の見分け方まで書きます。
「次」を探しているのは、子どもですか、大人ですか
最初に確かめてほしいことがあります。子ども自身が「もっと難しいことをやりたい」と言っているのか、それとも大人の側が「このままでいいのだろうか」と感じているのか、です。
この2つはまったく別の状況です。前者なら、選択肢を並べて一緒に選べばいい。後者の場合、次の教材を渡しても、たいてい2〜3週間で止まります。子どもの中に「作りたいもの」がないまま道具だけが新しくなるからです。
私たちが現場で見ているかぎり、子どもが自分から次を求めているサインは、はっきりしています。作ったものを誰かに見せたがる。同じ作品を何度も直す。「これ、どうやってるんだろう」と他人の作品を分解しはじめる。この3つのどれかが出ていれば、次に進んで大丈夫です。
Scratchの「何が」面白かったのかを見分ける
同じScratchを使っていても、子どもが夢中になっている部分はまったく違います。ざっくり3つに分かれます。
物語型は、キャラクターやセリフ、世界観を作るのが楽しい子です。仕組み型は、点数の計算やあたり判定など、裏側の組み立てに時間をかける子です。反応型は、押したら何かが動く、その手ごたえ自体を面白がる子です。
ここを見誤ると、進む先を間違えます。物語型の子にいきなりテキストのプログラミング言語を渡すと、書きたい話に届く前に文法で止まります。反応型の子に画面の中の課題を積み上げても、手ごたえが薄くて離れていきます。
選択肢は3つ。並べて比べる
| 進む先 | 向いている子 | つまずきやすいところ | 先に要るもの |
|---|---|---|---|
| テキストの言語に移る | 仕組み型 | 英語のエラー文と入力の手間 | ローマ字入力にある程度慣れていること |
| Scratchのまま重くする | 物語型・仕組み型 | 完成しないまま長期化する | 締め切りと、見せる相手 |
| 画面の外の物を動かす | 反応型・物語型 | 機材の費用と置き場所 | 実物、または体験できる場 |
この表で言いたいのは、上のほうが高度で下が入門、ということではないという点です。3つは難易度の階段ではなく、方向の違いです。
①テキストで書く言語に移る
いちばん想像しやすい道です。ただ、ここで止まる子の理由はほぼ共通していて、プログラミングの考え方ではなく入力そのものにあります。1行打つのに時間がかかると、頭の中の「作りたい」が先に冷めてしまいます。
目安として、ローマ字入力でひらがな1文を止まらずに打てるかどうかを見てください。そこが怪しいうちは、無理にテキストへ進むより、キーボードに触れる時間を増やすほうが結果的に早く進みます。
もうひとつ。エラーメッセージは基本的に英語です。「読めない文章が出たら大人に見せていい」と最初に約束しておくだけで、投げ出す確率がかなり下がります。
②Scratchのまま、作るものを重くする
これがいちばん軽視されていて、いちばん効く選択肢です。道具を変えず、作るものの難易度を上げます。
具体的には、変数やリストを使って記録を残す、クローンで敵を増やす、遊ぶ人が飽きないように難易度を調整する、といった方向です。ここでやっていることは、実際の開発の仕事とほとんど同じです。道具が簡単なだけで、考えていることは簡単ではありません。
この道を選ぶときの条件はひとつだけ、見せる相手を決めることです。誰にも遊んでもらわない作品は、途中で終わります。家族でも、いとこでも、友だちでもかまいません。遊んでもらって、詰まったところを直す。この往復が入ると、子どもは勝手に難しいことをやりはじめます。
③画面の外にある物を動かす
ロボット、ドローン、3Dで作った立体。画面の中で完結していたものが、現実の物になる方向です。
反応型の子には、この方向がいちばん刺さります。思ったとおりに動かない、という手ごたえが強いからです。ドローンをプログラムで飛ばす体験では、Scratchに近いブロックで命令を組み立てますが、床の状態や電池の残りで結果が変わります。画面の中では起きなかったことが起きる、というのがこの方向の価値です。
3Dの方向も同じです。パソコンで形を作って立体にする体験では、画面上できれいに見えたものが、実物にすると薄すぎて折れることがあります。この「思っていたのと違う」が次の設計につながります。
うまくいかなかったこと:次を用意しすぎた場合
私たちが失敗したパターンも書いておきます。意欲のある子に対して、良かれと思って次の課題を先回りして並べたことがありました。結果は逆で、その子は数週間で手を止めました。
あとから振り返ると、原因ははっきりしています。作るものを決める役割まで、こちらが取り上げてしまっていたのです。何を作るかを自分で決める部分は、いちばん面白いところであり、いちばん力がつくところでもあります。ここは渡してはいけませんでした。
ですから、次の教材を探す前に一度確認してください。子どもが「作りたいもの」を口に出せる状態でしょうか。出てこないなら、足りていないのは教材ではなく材料のほうです。ここでいう材料とは、見たことのないものに触れた経験のことです。
私たちが「次」の入口として置いているもの
デジタルキッズクラブは、愛媛・東京・千葉・愛知でイベントや出張・オンラインのワークショップを開いています。決まったカリキュラムを順番に進める場ではなく、その日一日、道具に直接手を伸ばす場です。
なぜその形にしているかというと、Scratchの次に必要なものが、多くの場合新しい教材ではなく新しい種類の失敗だからです。飛ばない、折れる、思ったとおりに出力されない。こうした失敗は、画面の中だけではなかなか起きません。
オンラインでできる体験もあります。オンラインの3D体験のように、自宅の端末だけで完結する形にしているものもあるので、近くで開催がない場合はこちらから試すこともできます。
明日、家で確かめられること
3つだけ挙げます。作った作品を誰かに見せたことがあるか。同じ作品を2回以上直したことがあるか。他人の作品の中身を見たことがあるか。
どれも当てはまらないなら、次の教材より先に、見せる相手を用意するほうが効きます。全部当てはまるなら、上の3つの道から、その子が面白がっていた方向に合うものを選んでください。順番に全部やる必要はありません。
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