
子ども向けのデジタル体験を施設で実施したい。そう考えたときに、まず「うちの会場でできるのか」で止まることが多いようです。特別な設備が要るのではないか、専用のスペースが必要ではないか、と。
結論を先に書きます。要るのは電源と机と動線、そして屋内であること。これだけです。専用の内装も常設の設備も要りません。機材はこちらが持ち込みます。
私たちは商業施設やお寺、公民館、学校の教室など、いろいろな場所で子ども向けのデジタル体験を運営してきました。実際に何が必要で、どこで詰まったのかを、失敗した回も含めて書きます。
要るもの、4つだけ
| 要るもの | 目安 | 無いとどうなるか |
|---|---|---|
| 電源 | 機材が多いほど必要。3Dプリンターやレーザー加工機を置く場合は口数と系統を事前に確認します | ブレーカーが落ちて、その時間帯が止まります |
| 机と椅子 | 体験ブースの数だけ。会議室の長机で足ります | 床に座らせる形になり、体験の質が落ちます |
| 動線 | 行列ができる前提の幅。人が並んでも通路がふさがらないこと | 体験そのものより、動線が崩れたときの被害が大きい |
| 屋内であること | 季節と時間帯に左右されない場所 | 冬季の屋外は人出が読めません。実際に夕方前から急減しました |
逆に言うと、この4つがあれば、会議室でも、お寺の広間でも、商業施設の空きスペースでも成立します。私たちが実際に使ってきた場所は、専用施設ではありません。
電源だけは、事前に細かく確認します
4つのうち、唯一「あるかないか」だけでは足りないのが電源です。ここは毎回、施設のご担当者と具体的に詰めます。
- コンセントの位置と口数。壁の位置によって、机の配置そのものが変わります
- ブレーカーの系統。同じ系統に機材が集中すると落ちます。3Dプリンターとレーザー加工機を同時に動かす場合は特に確認します
- 延長コードを床に這わせられるか。養生テープの使用可否は施設によって違います。ここが不可だと配置を全部組み直すことになります
この3つを事前にお聞きできると、当日の設営が短くなります。写真を1枚いただけると、それだけで判断できることが多いです。
広さは、人数ではなく「並び方」で決まる
よくいただく質問が「何平米あればいいですか」ですが、面積だけでは決まりません。体験の種類によって、同じ人数でも必要な広さが変わります。
| 体験の型 | 必要なもの | 向く場所 |
|---|---|---|
| 短時間・高回転(3Dペンなど) | 机まわりのスペースより、並ぶ場所の確保 | 通路幅のある商業施設、広間 |
| じっくり型(3Dモデリングなど) | 1人あたりの作業スペースと、落ち着いて座れる環境 | 会議室、教室 |
| 動きのあるもの(ドローンなど) | 天井高と、飛行させる範囲の確保 | 体育館、広い和室、屋内広場 |
ドローンだけは天井高が効きます。それ以外は、普通の部屋で足ります。
意外と要らないもの
相談の段階で「用意しないと」と思われがちですが、不要なものも挙げておきます。
- Wi-Fi。内容によっては使いますが、多くの体験はオフラインで完結します。無い前提で組めます
- プロジェクターやスクリーン。こちらで必要なぶんは持ち込みます
- 専用の内装や装飾。普段の姿のままで構いません。むしろ、普段は別の用途に使われている場所のほうが、子どもの構えが変わります
- 常設のスペース。私たちは常設拠点をつくって、やめています
うまくいかなかったこと
最後の点について書きます。2023年11月、今治の商業施設のなかに、無料で入れる常設の拠点を開きました。ドローン、3Dプリンター、電子楽器、3Dペンを常時置き、週4〜5日開けていました。
結果は、来館が1日あたり0〜7組で張り付きました。2024年5月末で営業を終えています。
設備が悪かったわけではありません。いつでも行ける場所は、今日行く理由にならない。これが結論でした。だから今は、常設ではなく「その日しかない一日」を、普段は別の用途に使われている場所でつくる形にしています。
もうひとつ、設営の失敗も書いておきます。数百人規模の一日で、3Dペンが想定より早く故障し、ドローンは充電が足りなくなりました。予備機を用意していませんでした。会場の設備の話ではありませんが、機材を持ち込む側の準備として、いまは予備を含めて数えるようにしています。
向かないケース
すべての場所で成立するわけではありません。こういう場合は正直にお伝えしています。
- 電源が確保できない。発電機を持ち込む規模ではないので、ここは代替できません
- 屋外のみで、冬季。人出が読めず、機材にもよくありません。暖かい時期であれば屋外も可能です
- 通路をふさげない場所で、行列が想定される。商業施設で多いパターンです。この場合は予約制の少人数型に切り替えます
- 搬入経路がない。3Dプリンターやレーザー加工機は台車で運びます。階段のみの2階以上は、内容を絞ることになります
場所の種類ごとの、追加の確認
基本の4つは共通ですが、場所の性質によって1つずつ足す確認があります。
| 場所 | 追加で確認すること |
|---|---|
| 商業施設 | 音の大きさの上限。営業中のフロアだと、機材音や呼び込みの音量に制限があります。あわせて、行列が通路をふさがない配置ができるか |
| お寺・神社 | 土足の可否と、床の養生。畳や板張りに機材を置く場合は、下に敷くものをこちらで用意します。行事の予定との重なりも先に確認します |
| 公民館・図書館 | 使用できる部屋の区分と、飲食の可否。図書館は静音が求められることが多く、その場合はドローンなど音の出る体験を外します |
| 学校 | 搬入車両を敷地内に入れられるか。授業時間との兼ね合いで、設営できる時間帯が限られます |
お寺で実施したときに感じたのは、普段は別の用途に使われている場所ほど、子どもの構えが変わるということでした。普段入らない場所で、普段触らない道具に触る。この二重の非日常が効きます。設備の良し悪しとは別の軸です。
当日、施設側にお願いすること
設備以外で、実際にお願いしているのはこのくらいです。
- 搬入時間の確保。設営には見た目より時間がかかります。開場の2〜3時間前から入れると安全です
- 館内での案内。掲示やアナウンスができると、その施設にすでに来ている人が来場します。これがいちばん効く集客です
- 当日の連絡先。電源やスペースで判断が要る場面が必ず出ます。その場で相談できる方が1人いると、進行が止まりません
私たちがやっていること
デジタルキッズクラブは、子どもが「使う側」ではなく「創る側」に立つ日をつくっている団体です。運営は lanitech合同会社。教室を持たず、地域の場所を借りて開催しています。愛媛・東京・千葉・愛知で開催してきました。
持ち込む機材は、ドローン、3Dプリンター、レーザー加工機、3Dペン、電子楽器、iPad、生成AIの体験環境など。愛媛から名古屋へ移送して運用しているので、移動を前提に組んであります。運搬・設営・当日の運営・撤収まで、こちらで行います。
体験の中身は1つずつ公開しています。3Dペンのように短時間で回せるものから、ドローン操縦のように場所を要するものまであります。出張ワークショップのページで、必要な設備とあわせてご確認いただけます。
会場の写真を1枚お送りいただければ、実施できるかどうかはその場でお答えできます。
施設での開催のご相談を承っています
機材はこちらで持ち込み、運搬・設営・当日の運営・撤収まで行います。会場の写真を1枚お送りいただければ、実施できるかどうかはその場でお答えできます。