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探究学習で「まとめ方」を教えすぎていないか|順番を変える4段階

探究学習で「まとめ方」を教えすぎていないか|順番を変える4段階

探究学習の授業を見せていただくと、後半にいくほど「まとめ方」の指導が厚くなっていきます。模造紙の割り付け、スライドの構成、発表の話し方。丁寧に教えられていて、成果物はきれいに揃います。

ただ、揃った成果物を並べたときに、どれも似た形になっていることがあります。問いの立て方が違うのに、結論の書き方が同じ。ここに、私たちは少し引っかかっています。

この記事は、外部から探究学習の場に呼ばれる側として見てきたことをまとめたものです。結論を先に書くと、「まとめ方」を教える量そのものが問題なのではなく、教える順番と、教える前に確保しておく時間の長さが問題になっているように見えます。批判を書きたいわけではありません。私たちが出前授業で同じ失敗をしたので、その反省も含めて書きます。

この記事の要点

  • まとめ方の指導が早く入るほど、子どもの問いが「まとめやすい問い」に寄っていきます
  • 探究が動く学級では、答えの出ない時間が意図的に長く確保されていました
  • 「まとめ方を教えない」のではなく、教える位置を後ろにずらすだけで変わる部分があります
  • 外部講師を入れるとうまくいくとは限りません。効かなかった場面も書きました

成果物がきれいに揃うのは、指導がうまくいった証拠なのか

探究学習の公開授業に呼んでいただくと、掲示された成果物を見る時間があります。よく整理されていて、出典も書かれていて、見せ方も工夫されている。指導が丁寧であることは、はっきり伝わってきます。

気になるのは、そのあとに子どもと話したときです。「この結論、どうやって決めたの」と聞くと、「先生が3つの型を教えてくれたので、その2番目にしました」という答えが返ってくることがあります。型を使えるようになったこと自体は成果です。ただ、その型が、問いを立てるところまで遡って効いてしまっている場合がある。

現場から

ある小学校で、テーマ決めの段階の子に「なんでそのテーマにしたの」と聞いたところ、「これなら最後にグラフにできるからです」と言われたことがありました。まとめ方を先に知っていると、まとめやすい問いを選ぶ。合理的な判断です。ただ、探究の順番としては逆になっています。

これは子どもが悪いのでも、先生の指導が下手なのでもありません。先に見せられた出口の形が、入口の選択を狭めたというだけのことです。

なぜ「まとめ方」から手厚くなるのか

この構造には理由があります。学校の側の事情を、外から見える範囲で整理するとこうなります。

01
評価しやすいのが成果物だから
問いの質や試行錯誤の量は、見えにくく、記録も残りにくい。一方で模造紙やスライドは残ります。残るものに指導が集まるのは自然なことです。
02
発表会の日程が先に決まっているから
年間計画で発表の日が押さえられていると、そこから逆算した進行になります。逆算するほど、迷っている時間が削られます。
03
保護者や地域への公開があるから
見せる相手がいると、見せられる形に整える必要が出ます。これは悪いことではなく、むしろ子どもの動機になる場面も多い。

3つとも、現場の判断としては筋が通っています。だから「まとめ方を教えるのをやめましょう」という提案は、たぶん機能しません。動かせるのは、教える量ではなく順番のほうです。

順番を入れ替えるだけで何が変わるか

私たちが出前授業でやってみて、手応えがあった並べ方を書きます。特別なことはしていません。

1. 触る・試す(形式は一切示さない)
道具でも資料でも構いません。この段階で「最後にどうまとめるか」は伝えません。伝えると、そこから逆算が始まります。
2. わからなかったことを口に出す
わかったことではなく、わからなかったことを先に集めます。ここが問いの種になります。書かせるより、まず言わせるほうが出ます。
3. 問いを一つに絞る
絞る作業は子どもがやります。教員が絞ると、そのあとの粘りが変わります。
4. ここで初めて、まとめ方の選択肢を出す
型を3つ見せて選ばせます。この位置なら、型は表現の道具であって、問いを規定するものにはなりません。

変えたのは4番の位置だけです。1〜3の合計時間を確保できるかどうかが、実際にはいちばん難しいところだと思います。

まとめ方は、問いが決まったあとに渡すと道具になり、決まる前に渡すと枠になる。

「答えが出ない時間」をどれだけ持てるか

私たちがイベントや出張の場で見ているかぎり、子どもがいちばん変わるのは、うまくいった瞬間ではなく、うまくいかない状態がしばらく続いたあとです。ドローンが思った方向に飛ばない、3Dモデルの面がうまく閉じない、その状態が数分続いてから、自分で条件を変え始める。

この「数分」を、授業の中でどう扱うかが分かれ目になります。ここを止まっている時間と見るか、進んでいる時間と見るか。

見取りの目安

止まっているように見えて実は進んでいるとき、子どもは同じ操作を条件を変えて繰り返しています。ただ固まっているときは、操作そのものが止まります。手が動いているかどうかで、かなり見分けがつきます。

タブレットでドローンを操作する手元
思ったように飛ばない時間が、そのまま次の問いになります。ここを短縮すると、問いも一緒に消えます。

まとめ方を教えるタイミング別に、起きること

実際に見てきた範囲を、タイミング別に整理します。学級の実態によって変わるので、断定ではなく傾向として読んでください。

教えるタイミング 起きやすいこと 向く場面
テーマ決めの前 まとめやすいテーマに寄る。進行は速く、揃いやすい 時数が極端に少ない単元。初めて探究を扱う学年
調べ始めた直後 調べる範囲が最初から狭まる。深追いが減る 情報が多すぎて散らかる学級
問いが決まったあと 型が表現の道具になる。個々の差が出る ある程度の時数が確保できる場合
発表の直前だけ 形は崩れるが、内容の粘りは残る 発表が校内に閉じている場合

どれが正しいという話ではありません。時数と学級の状態で選ぶものだと考えています。ただ、上の2つを選んだ場合は、揃った成果物を見て「探究できた」と判断しないほうが安全だと思います。

うまくいかなかったこと:私たちの失敗

順番の話を書きましたが、私たち自身がこれで失敗しています。

ある回で、「形式を示さないほうがいい」を徹底しすぎて、最後の15分まで何も枠を出さなかったことがありました。結果、書き出せない子が出て、その子は最後まで何も残せませんでした。振り返りの時間も足りず、本人にとっては「何もできなかった日」になってしまった。

ここから学んだこと

枠を出さないことと、何も渡さないことは違います。今は、問いが決まった段階で、書き出しの一文だけを渡すようにしています。「私が気になったのは、◯◯が△△だったことです」の形です。これは型ではなく、動き出すための一歩として機能します。

もうひとつ、外部講師を入れれば探究が動く、というのも私たちは信じていません。実際、単発で入っただけで学級の中の関係が変わることはほぼありません。効いたのは、担任の先生が事前に「この単元では正解を出さない」と学級に伝えていた回でした。外部の人間ができるのは、そこに材料を足すところまでです。

動いていた学級に共通していた3つ

これまでに出張で入らせていただいた学級のうち、明らかに子どもの動きが違った回を思い返すと、共通点が3つありました。いずれも、指導技術というより学級の運用に近いものです。

01
「まだ決まっていない」が許されている
テーマが決まっていない子がいても、その状態のまま次の時間に進めていました。決まった子から先に進む形にすると、決まっていないことが遅れとして扱われ、適当に決める子が出ます。
02
教員が答えを持っていないテーマが混ざっている
先生自身が答えを知らない問いが学級にあると、聞きに来る相手が先生ではなくなります。子ども同士や、外部の人に聞きにいく動きが出てきます。
03
失敗した記録が掲示に残っている
うまくいった成果物だけでなく、途中でやめた案が残っていました。これがあると、行き詰まった子が「自分だけではない」と分かります。

逆に、この3つがないまま「もっと自由に考えていいよ」と声をかけても、あまり効きませんでした。自由に考えていい、という言葉だけでは、それが評価に響かないことの保証にならないからだと思います。

校内で共有するときに、いちばん揉めるところ

この話を校内研修でさせていただくと、必ず出る論点があります。「問いを自由にすると、学年で評価の基準が揃わないのではないか」というものです。これは正当な指摘だと思います。

実際にうまく回していた学校では、評価の対象を成果物から切り離していました。成果物ではなく、問いが途中で変わったかどうか、変わった理由を説明できるかどうかを見る。そうすると、テーマがバラバラでも同じ観点で見られます。

補足

この方法は、私たちが考案したものではなく、実際にそう運用していた学校で教えていただいたやり方です。全校で導入する話になると学年間の調整が要りますので、まずは1学年・1単元で試して、掲示物の中身がどう変わるかを見るのが現実的だと思います。

教員側でできる小さな運用

大がかりな計画変更をしなくても動かせるところを挙げます。

  1. 最初の1時間、成果物の話をしないまとめ方だけでなく、「発表会がある」という情報も後ろに回せると、テーマ選びが変わります。
  2. わからなかったことを板書に残すわかったことの横に、わからなかったことの列を作ります。消さずに単元の最後まで残しておきます。
  3. 問いを一度、口頭で言わせる書かせる前に言わせると、まだ整理されていない問いが出てきます。整理される前の問いのほうが、本人の関心に近いです。
  4. 型は3つ以上まとめて出す1つだけ示すと、それが正解になります。3つ並べると、選ぶ行為が生まれます。
  5. 振り返りに「変わった問い」を書く欄をつくる最初の問いと最後の問いが違っていた子を、失敗として扱わないための仕掛けです。

やらなくていいと思っていること

  • 全員に同じ形式の成果物を作らせること。形式が揃うほど、比較はしやすくなりますが、問いの差は見えなくなります
  • 調べる手段をデジタルに寄せること。紙の資料や現地で聞く行為のほうが、一次情報に近い場面は多いです
  • 外部講師を毎回入れること。回数より、入れる位置のほうが効きます
  • 先進的な事例に合わせること。時数も学級の状態も違うので、そのまま持ってくるとだいたい合いません

私たちが出張授業で持ち込んでいるもの

デジタルキッズクラブは、教室を持たずに、イベントと学校・施設への出張、それにオンラインのワークショップという形で活動している団体です。愛媛・東京・千葉・愛知で開催してきました。運営はlanitech合同会社です。

探究学習の時間に呼んでいただく場合、私たちが持ち込んでいるのは「答えの出し方」ではなく、答えが出ない状態を安全に作れる道具です。ドローン、3Dモデリング、レーザー彫刻、生成AI。どれも、思ったとおりにならない時間が必ず発生します。そこが本題で、機材は口実に近い。

活動の背景には、地域にITで活躍する大人が少なく、子どもがその進路を候補に入れられていない、という問題意識があります。だから機材を見せることより、それを使っている人と話す時間を残すようにしています。ドローンプログラミング や オンラインの生成AI体験 のページに、45分・90分でどこまで進むかを実際の進行に沿って書いています。

スクリーン前に人が集まる会場の様子
出張の場合も、全体説明は短くして、手が動く時間を長く取る組み立てにしています。

AI が使える前提で、まとめ方の指導はどうなるか

もうひとつ触れておきます。生成AIは、まとめ方の部分をかなり肩代わりできます。構成を整えることも、文章を整えることも得意です。そうなると、まとめ方の指導の価値は相対的に下がっていきます。

私たちも答えを持っていません。持っているふりもしません。ただ、賭けているところが2つあります。ひとつは、AIが代替できない一次情報――自分で見た、触った、聞いた、うまくいかなかったという経験――の価値が上がること。もうひとつは、AIに使われる側ではなく使う側になる練習が要ること。この2つで見ると、探究学習で守るべきなのは、まとめの精度よりも、問いが自分のものかどうかのほうだと考えています。

よくある質問

Q. まとめ方を教えないと、成果物が形にならないのではないですか。

A. 教えないほうがよいという主張ではありません。教える位置を、テーマ決めより後ろにずらすという話です。私たちは、まったく枠を出さずに進めて書き出せない子を出してしまった失敗があり、いまは問いが決まった段階で書き出しの一文だけを渡すようにしています。

Q. 授業時数が少なく、答えの出ない時間を長く取れません。

A. その場合は、まとめ方を早めに示す進め方のほうが現実的だと思います。ただそのときは、揃った成果物をもって探究ができたと評価しないほうが安全です。時数が少ない単元では、問いを立てる部分だけを切り出して扱う方法もあります。

Q. 外部講師を呼べば、探究の質は上がりますか。

A. 単発で入るだけでは、学級の中の関係はほとんど変わりません。私たちの実感では、担任の先生が事前に「この単元では正解を出さない」と学級に伝えていた回のほうが、明らかに動きが違いました。外部が足せるのは材料までです。

Q. 出張授業は何分から対応できますか。

A. 45分1コマから対応しています。ただし内容によって、1コマで成立するものと、2コマ続きが必要なものがあります。機材の設営時間も必要になるため、時間割の組み方は事前にご相談ください。オンライン形式も可能です。

Q. 機材は学校側で用意する必要がありますか。

A. 機材はこちらで持ち込みます。学校側で必要になるのは、電源、机、そして子どもの動線が取れる広さです。オンラインの場合は、学校の端末とネットワーク環境の確認をさせていただきます。

授業・行事への出張を承っています

総合的な学習の時間、学校行事、校内研修などに、機材を持ち込んで伺います。オンラインでの実施もできます。日程が決まっていない段階のご相談でも構いません。

出張・オンラインの相談をする

すでにご検討中の方は こちらから直接ご相談ください。

この記事を書いた人

デジタルキッズクラブ(運営:lanitech合同会社)/西脇 靖紘

デジタルキッズクラブ 代表。愛媛・東京・千葉・愛知で、子どもがデジタルの道具に直接手を伸ばす一日一日をつくっています。これまでに延べ1,000名以上の子どもと保護者に体験を届けてきました。愛知淑徳大学ではAI関連科目の非常勤講師も務めており、日々AI×教育と向き合っています。これら記事の内容は、私たちの現場での運営や観察にもとづいています。

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