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情報活用能力は「触った時間」では育たない|45分で変える4手順

情報活用能力は「触った時間」では育たない|45分で変える4手順

一人一台の端末が入って数年が経ち、子どもが端末に触れている時間は確実に増えました。それなのに、情報活用能力が育っている手応えがない——先生方からそう伺うことが増えています。

私たちは外部の講師として、学校や公民館、放課後の場に機材を持ち込んで一日の体験をつくっています。教室の中を毎日見ている立場ではありませんが、同じ子どもが「触っているだけの時間」と「考えている時間」の両方を、短い時間の中で行き来する場面を何度も見てきました。その差がどこで生まれているかを書きます。

結論から言えば、情報活用能力は端末に触れた時間の長さでは育ちません。育つのは、子どもが自分で選ばなければ前に進まない場面を、授業の中に何回置けたかで決まります。回数であって、時間ではありません。

この記事の要点

  • 端末の利用時間と情報活用能力は比例しない。操作の再現だけが積み上がる時間が長いため。
  • 2026年9月時点、次期学習指導要領は案の段階だが、情報活用能力は「学びの基盤」としてさらに前に出る方向で議論されている。
  • 育つ場面には共通点がある。選択が必要で、選んだ結果がすぐ返ってきて、直せること。
  • 時数を増やさずにできる。45分の中で「決める→試す→直す」を1周させるほうが、45分間ずっと触らせるより残る。

端末の利用時間が増えても、手応えが出ない理由

授業でよく見る流れがあります。課題が示され、子どもは検索し、見つけた情報をスライドに貼り、体裁を整えて提出する。端末はずっと開いています。作業時間も長い。けれど終わったあとに残っているのは、貼り付けの手順とスライドの操作だけ、ということが起こります。

これは子どもの問題でも、先生の教え方の問題でもありません。作業の中に、子どもが選ばなければならない地点が一度もないからです。検索して最初に出たものを使い、指定されたテンプレートに入れる。どこにも分岐がなければ、判断は一度も発生しません。判断が発生しなければ、判断する力は使われません。

「触った時間」で育つのは操作の速さです。それも大事な力ですが、情報活用能力と呼ばれているものの中身とは違います。

タブレットを操作しながら機材を動かす子どもの手元
端末に触れている時間の長さではなく、その中で何回「決めたか」が残るものを分けています。

2026年9月時点の制度の動き

制度の側も動いています。現行の学習指導要領で、情報活用能力はすでに言語能力と並ぶ「学習の基盤となる資質・能力」として位置づけられており、教科等横断的に育てることとされています。

そのうえで、文部科学省の中央教育審議会・教育課程企画特別部会が2026年8月31日に示した次期学習指導要領等に向けた審議まとめの素案では、情報活用能力をすべての教科等の学びの基盤として位置づける方向が示されました。小学校の総合的な学習の時間に情報の領域を置くこと、中学校に情報・技術科を設けることも含まれています。

⚠ 2026年9月時点での注意

ここで触れているのはまだ案・素案の段階の内容です。改訂は2026年度末の予定、一部先行実施が2028年度、順次全面実施が2030年度以降という時間軸で議論されています。最終的な告示の内容は変わり得ますので、校内で共有される際は必ず文部科学省の資料の最新版でご確認ください。

実務上の意味は単純です。情報活用能力のための時間が別枠で大きく増えるという話ではなく、いまある教科の中で育てる前提が、さらに強くなるということです。だからこそ「長く触らせる」ではない方法が要ります。

「触った時間」が力にならない3つの理由

理由 1操作の再現になっている手順が示されている作業は、なぞれば終わります。なぞる時間がどれだけ長くても、判断は一度も起きません。
理由 2選択肢が用意されていない使う道具もまとめ方も指定されていると、子どもは「どれを使うか」を考えません。情報活用能力は選ぶところに宿ります。
理由 3結果が返ってこない提出して終わると、判断が良かったかどうかが本人に返りません。返らないものは次に生きません。

裏返すと、この3つを反転させた場面をつくれば、端末に触れる時間が短くても育ちます。私たちが持ち込む体験が短時間でも子どもの中に何か残るのは、意図的にこの形にしているからです。

育つ場面と、育たない場面の違い

現場で見てきた差を、そのまま表にします。左から右へ進むほど、子どもの中で起きていることが増えます。

段階 子どもがしていること 残るもの
触るだけ 示された手順をなぞる。アプリを開いて閉じる 操作の速さ。次の授業では思い出せないことが多い
選ぶ 複数のやり方から自分で1つを選ぶ。理由を言う 判断の経験。ただし結果が返らないと定着しにくい
決めて、直す 選んで試し、うまくいかない箇所を見つけて自分で直す 手順ではなく考え方。別の道具でも再現できる

いちばん右の段階に入った子は、見ていてすぐわかります。手が止まる時間が増え、画面ではなく手元や隣の子を見るようになります。止まっている時間は、育っていない時間ではありません。そこを待てるかどうかが、設計のいちばん難しいところです。

情報活用能力が育つのは、端末に触れている時間ではなく、子どもが自分で決めなければ前に進まない場面の回数で決まる。

外部の講師として教室に入って見えたこと

私たちは機材を持ち込む側なので、授業の中身ではなく、子どもの動き方を見ています。そこで毎回のように起きることが2つあります。

ひとつは、普段の教室で手が止まりがちな子が、先に動き出すことです。答えのある課題ではないので、正解を待つ姿勢が有利にならない。もうひとつは、説明を聞くのがうまい子ほど、最初の一手が遅いことです。「これで合っていますか」と確認してから動こうとするためです。この2つは学力の話ではなく、その場の課題の性質が引き起こしている反応です。

現場から|子どもが書いた感想

生成AIを使う体験のあと、子どもが振り返りにこう書いたことがあります。「ChatGPTの答えが間違っているということを初めて知りました。」ドローンの体験では「ドローンに登録が必要なことをはじめてしりました。」という感想も出ました。どちらも、こちらが教えた知識ではなく、自分で試して出力を見た結果として出てきた言葉です。情報活用能力の入口は、たぶんこの種類の気づきのほうにあります。

時数を増やさずに、45分の中でどう組むか

次期の議論では、標準授業時数を一定の範囲で下回れるようにする仕組みも検討されています。つまり、情報活用能力のために時間を足すという発想は現実的ではありません。いまの1コマの中身を組み替えるほうが早い。

私たちが出張の授業で使っている45分の組み方は、次の形です。子どもが端末に触れている時間はむしろ短くなります。

  1. 最初の10分は端末を開かない何をつくるか、何を調べるかを紙と言葉で決めます。ここを飛ばすと、残り35分が操作の時間に変わります。
  2. 試す時間は、あえて短く切る15分で一度手を止めさせます。時間が余っていると、直す動機が生まれません。
  3. うまくいかなかった箇所を口に出させる2人1組で1分ずつ。ここが評価の材料にもなります。
  4. 直す時間をもう一度とる1周目より短くて構いません。直したという事実が残ることが大事です。
決める(端末を開かない)目的と方法を先に言葉にする。ここが情報活用能力のいちばん濃い時間です。
試す(短く切る)うまくいかない状態で一度止める。止めるから直したくなります。
直す(もう一周)同じ道具で2周目に入る。ここで初めて、手順ではなく考え方が残ります。

うまくいかなかったこと

私たちの失敗も書いておきます。名古屋のお寺で開いた数百人規模のイベントでは、人気の体験に長い待ち列ができ、用意した台数が足りなかった体験は途中で受付を止めることになりました。「体験させれば伝わる」と考えて、回転と人数の設計を甘く見たのが原因です。

学校でも同じ失敗の形があります。端末を配って動かした時点で、授業が成立したように見えてしまう。実際には、子どもが何を決めたのかを誰も見ていない、ということが起こります。私たちも一度、機材の数に対して人数が多すぎて、順番を待つ子が「見ているだけ」になった回がありました。以来、同時に動かせる人数から先に決めるようにしています。

スクリーンの前に子どもたちが集まる体験会場
同時に動かせる人数を先に決めておかないと、待っている子の時間が「見ているだけ」に変わります。

評価は、作品ではなく分岐点で見る

次期の議論では、形成的な評価を重く見て、総括的な評価は精選する方向が示されています。情報活用能力は完成物では測りにくい力なので、この方向はやりやすさにつながります。

私たちが記録用に使っているのは、次の3つだけです。難しい観点表は要りません。

  • どこで迷ったか。迷いの位置が、その子がいま扱える情報の範囲を示します。
  • 何を選んだか、なぜそれにしたか。理由が言えれば、選択は判断になっています。
  • どこを直したか。直した箇所は、その子が自分で見つけた不具合です。教えられた修正とは意味が違います。

振り返りシートに何を書かせるかは、別の記事でも扱っています。用紙を増やすより、この3つに絞るほうが子どもも書けます。

やらなくていいこと

時間が足りないのが前提なので、削っていいものも挙げます。ひとつめは、アプリの機能紹介に時間を使うこと。必要な機能は使う場面で教えれば足ります。ふたつめは、完成物の見た目をそろえること。テンプレートを配るほど、判断の機会は減ります。みっつめは、タイピング練習を情報活用能力の入口に置くこと。必要な力ではありますが、別のものです。

よっつめに、端末を使うこと自体を目的にした課題です。紙のほうが速い作業に端末を使うと、子どもは「大人は端末を使わせたいだけだ」と気づきます。道具を選ぶ判断を子どもに渡すほうが、結果的に情報活用能力に効きます。

この組み方が向かないケース

ここまでの方法は万能ではありません。効きにくい場面が3つあります。

ひとつめは、その単元で身につけるべき操作が明確に決まっている場合です。特定のソフトの使い方を全員に揃えたいときは、手順をなぞらせるほうが確実で速い。判断の機会を無理に入れると、目的とずれます。情報活用能力を育てる時間と、道具の使い方を揃える時間は、分けて考えたほうがうまくいきます。

ふたつめは、クラスの中で端末の操作習熟に大きな差があるときです。「決める」時間を与えても、操作に自信がない子は決めようがありません。この場合は先に操作の底上げを1コマ使い、そのうえで判断の場面をつくるほうが結果的に早い。順番を逆にすると、差がそのまま参加度の差になります。

みっつめは、提出物の締切が迫っているときです。直す時間を確保できない状況で「試す」を入れると、やりっぱなしで終わります。直せないなら、試させないほうがいい。私たちも、時間が読めない日は体験の工程を1つ減らして、直す時間のほうを残すようにしています。

補足|学年が上がるほど「決める」が難しくなる

意外に思われるかもしれませんが、自分で決める場面をつくったときに固まりやすいのは高学年以降です。低学年は「とりあえずやってみる」で動けますが、学年が上がるほど、間違えることのコストを気にして最初の一手が遅くなります。高学年で導入する場合は、選択肢を3つ程度に絞って提示し、そこから選ばせるところから始めると動きやすくなります。

外部を入れるという選択肢

ここまで書いてきたことは、外部講師がいなくても成立します。そのうえで、学校の先生だけでは用意しにくいものが2つあります。ひとつは、答えを持っていない大人が教室にいるという状況。もうひとつは、学校では持ちにくい機材です。

デジタルキッズクラブは教室を持たず、愛媛・東京・千葉・愛知でイベントと出張のワークショップを行っています。移動が難しい場合はオンラインの出前授業という形もあります。45分1コマから、総合的な学習の時間や学校行事に合わせて組み立てています。

よくある質問

Q. 情報活用能力は、どの教科で育てるものですか。

A. 現行の学習指導要領では、言語能力と同じく「学習の基盤となる資質・能力」として、教科等横断的に育てることとされています。特定の教科の中だけで完結させる前提にはなっていません。

Q. 端末の利用時間を記録していますが、指標として使えますか。

A. 環境が整っているかの指標としては使えますが、能力が育ったかの指標にはなりません。子どもが選択した回数や、直した回数のほうが実態に近くなります。

Q. 次期学習指導要領で、情報活用能力の扱いは変わりますか。

A. 2026年9月時点では案・素案の段階です。すべての教科等の学びの基盤として位置づける方向が示されており、小学校の総合的な学習の時間に情報の領域、中学校に情報・技術科を設ける案も含まれています。最終的な内容は文部科学省の最新資料でご確認ください。

Q. 1コマしか時間が取れません。それでも意味はありますか。

A. あります。ただし「決める→試す→直す」を1周させることを優先してください。45分ずっと触らせるより、短く切って直す時間をつくるほうが残ります。

Q. 外部講師に依頼する場合、何から相談すればいいですか。

A. 実施したい時期、対象学年と人数、1コマか複数コマかの3点が決まっていれば相談を始められます。会場の設備や機材の条件は、こちらから確認事項をお出ししています。

授業・行事への出張を承っています

45分1コマから、総合的な学習の時間や学校行事に合わせて組み立てます。移動が難しい場合はオンラインでの実施もご相談いただけます。

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この記事を書いた人

デジタルキッズクラブ(運営:lanitech合同会社)/西脇 靖紘

デジタルキッズクラブ 代表。愛媛・東京・千葉・愛知で、子どもがデジタルの道具に直接手を伸ばす一日一日をつくっています。これまでに延べ1,000名以上の子どもと保護者に体験を届けてきました。愛知淑徳大学ではAI関連科目の非常勤講師も務めており、日々AI×教育と向き合っています。これら記事の内容は、私たちの現場での運営や観察にもとづいています。

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