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子どもの写真の掲載許諾|イベント運営で決めておく5つのこと

子どもの写真の掲載許諾|イベント運営で決めておく5つのこと

子ども向けのイベントを開くと、必ず写真を撮ります。そして必ず、あとで困ります。「この写真、広報誌に使っていいんだっけ」「SNSは?」「来年のチラシは?」。当日にどう撮るかより、撮ったあと何年使えるかを先に決めておかないと、良い写真ほど使えないまま残ります。この記事は、私たち自身が実際に詰まったところを含めて、運営側の手順として書きます。

この記事の要点

  • 「肖像権」と「個人情報保護法」は別の話。混ぜると判断がぶれる
  • 同意書は当日ではなく申込フォームの段階で取る。受付での記入は必ず滞る
  • 使う範囲を「媒体」ではなく「年数」で区切ると、翌年の判断が速くなる
  • 顔が写らないカットを意図的に撮っておくと、許諾が取れなかったときの逃げ道になる

最初に、二つの話を分けておく

この論点がややこしくなるのは、性質の違う二つのルールが同時に関わるからです。担当者間の会話が噛み合わないときは、だいたいこの二つが混ざっています。

観点 何の問題か 実務上の判断
肖像権 本人の姿をみだりに公表されない利益。法律に条文があるわけではなく、裁判例の積み重ねで認められてきたもの 撮影・公表の目的、場所、写り方の程度などから個別に判断される。「同意を取ったか」が最も強い判断材料になる
個人情報保護法 個人を識別できる情報の取扱いルール。顔が判別できる写真は個人情報にあたり得る 利用目的の特定と、通知または公表が求められる。第三者提供にあたるかどうかで扱いが変わる

個人情報保護委員会は、行事で撮影した写真について、写真が個人データとして扱われない場合には社内での掲示に事前の同意までは必要ないとしつつ、利用目的の通知または公表は必要であること、不特定の相手に提供する場合には掲示期間を限定したり同意を得たりすることを検討するよう示しています(2026年9月時点、個人情報保護委員会「よくある質問」より)。

ここは断定しないでください

個別の事案が適法かどうかは、目的・媒体・写り方・保存期間などの組み合わせで変わります。この記事は運営上の段取りを整理したもので、法的な助言ではありません。自治体の広報媒体や、協賛企業の販促物に載せる可能性がある場合は、早い段階で法務や顧問弁護士に確認してください。

同意を取るタイミングは、当日ではなく申込のとき

いちばん失敗しやすいのがここです。受付で同意書を配って記入してもらう方式は、机上では成立しますが、当日はまず回りません。

開場直後は列ができます。その状態で保護者に紙を読ませ、チェックを入れさせ、署名を求めると、受付が止まります。結果どうなるかというと、「あとでいいですよ」と言ってしまい、その「あと」は来ません。私たちも一度これをやりました。

1. 申込フォームに同意項目を入れる事前申込制なら、ここで済ませます。チェックボックスひとつで、当日の受付は一切止まりません。
2. 当日は「意思表示できる仕組み」だけ置く当日参加がある場合に備え、掲示と、撮影を望まない方の申し出先を受付に用意します。
3. 写り込みたくない方を見分けられるようにする色違いのシールやリストバンドなど、撮影担当が遠目で判別できる目印にします。口頭申し送りは必ず漏れます。

「媒体で区切る」のをやめて、「年数で区切る」

同意書の文面でよくあるのが、使用先を媒体名で列挙する形です。ウェブサイト、SNS、広報誌、チラシ、報告書。丁寧に見えますが、運用に入ると詰まります。列挙していない媒体が出てきた瞬間に、また判断が必要になるからです。

私たちが実務として使いやすいと感じているのは、「目的」と「期間」を軸にする書き方です。目的は「本事業および同種事業の記録・報告・広報のため」といった形で特定し、期間は「撮影日から◯年」と明示する。そのうえで、営利目的での二次利用や、第三者への提供にあたる部分は別項目にして、個別にチェックを取ります。

現場から

年数を切っておくと、翌年の担当者が助かります。「去年の写真、今年のチラシに使える?」という問いに、同意書を1枚見れば答えが出るからです。媒体列挙方式だと、毎回さかのぼって読み込むことになり、結局「念のためやめておこう」で良い写真が死蔵されます。

協賛企業や自治体が絡むと、条件がひとつ増える

ここが見落とされます。協賛企業の販促物や、自治体の広報媒体に載せる場合、それは主催者以外の第三者による利用にあたる可能性があります。保護者が「主催団体のサイトに載るなら」と思って同意したものと、実際の使われ方がずれてしまう。

この齟齬は、あとから埋められません。ですから、協賛や連携の座組みが見えている段階で、同意書に「協賛企業・共催団体の広報物への掲載を含む」という項目を独立して置き、チェックを分けておきます。チェックしない方がいても運営は成立するように、写真の使い分けを設計しておくことが前提です。

顔が写らないカットを、意図して撮る

ここが実務上いちばん効いた工夫でした。許諾の判断がどう転んでも使える写真を、最初から撮影計画に入れておくということです。

CUT 1手元だけのカット機材を操作している手、つくりかけの造形物。何をやっている場なのかがいちばん伝わるのは、実はこの種の写真です。
CUT 2会場の遠景人の入りと空気感が伝わり、個人は識別できない距離。報告書の冒頭に置く一枚はこれで足ります。
CUT 3後ろ姿・背中越しスクリーンや机に向かう背中。子どもが集中している様子を、顔を出さずに伝えられます。
子ども向けイベント会場の遠景
個人が識別できない距離の一枚を必ず押さえておくと、許諾の結果に関わらず報告書と広報の両方で使えます。

許諾が取れた写真より、許諾がなくても使える写真の方が、長く働きます。

撮影担当への申し送りは、3行で足りる

当日、カメラを持つ人が外部のカメラマンである場合も多いはずです。長い説明書を渡しても読まれません。私たちが伝えているのは次の3点だけです。

  • 目印(シール・リストバンド)のある子は、顔が判別できる形で撮らない
  • 各シーンで「顔あり」と「顔なし」を1枚ずつ押さえる
  • 迷ったら撮る。使うかどうかはあとで決められるが、撮っていないものは増やせない

データの置き場所も決めておく

撮影後のデータをどこに置き、誰がアクセスでき、いつ消すか。ここまで決めて初めて手順になります。個人が写った写真を共有ストレージに入れっぱなしにしないことは、同意書の文面と同じくらい重要です。

作品の写真は、別枠で考えると素材が増える

見落とされやすいのですが、子どもがつくったもの自体を撮った写真は、人物写真とは扱いが変わります。造形物、描いた絵、組み上げたロボット。これらは顔が写らないので、人物写真より格段に使いやすい素材になります。

ただし、まったく自由に使えるわけではありません。作品をつくったのは子どもですから、誰の作品かが特定できる形で公表するなら、そこにも一言を入れておくのが誠実です。名前を添えて紹介したいのか、作品だけを匿名で使うのか。同意書に一行加えるだけで、後から判断に困らなくなります。

報告書に効く素材

「何が起きた日だったか」を伝えるうえで、成果物の写真は人物写真より雄弁なことが多いです。同じ課題を出したのに全部違う形が並んでいる、という一枚は、参加人数の数字より説得力があります。

うまくいかなかったこと

正直に書きます。私たち自身、過去に開催した回の写真のうち、子どもの顔が写っているものの掲載許諾が整理しきれていない分があります。当時、同意の取得と写真データの管理を別々に走らせてしまい、「どの写真がどの同意に紐づくか」を後から突き合わせられなくなったためです。

結果として、良く撮れている写真ほど使えないという状態になりました。いま私たちが公開の場で使っているのは、顔が写らないカットに限っています。この記事で「年数で区切れ」「顔なしカットを撮れ」と書いているのは、そこで実際に困ったからです。

断られたときに、運営が崩れない設計にしておく

同意しない選択が普通にあり得る、という前提で組むことが大切です。断った家庭が気まずくなる設計になっていると、それ自体が参加の障壁になります。

具体的には、目印は目立たないものにする、受付で理由を聞かない、同意の有無で参加できる内容を変えない。この3つを守れば、断ることのコストは下がります。参加してもらうことが目的であって、写真を集めることが目的ではありません。

記録としての写真と、広報としての写真を分ける

もうひとつ、整理しておくと楽になる軸があります。同じ写真でも、内部の記録として残すのか、外部に向けて公表するのかで、必要な配慮の水準が変わるという点です。

事業報告のために組織内で保管する写真と、誰でも見られるウェブサイトに載せる写真では、後者の方がはるかに広い範囲に届きます。同意を取る際も、この二つを同じ欄にまとめないほうが、答える側も判断しやすくなります。私たちは出張のワークショップやオンラインの回でも、この区別を最初に主催者側と確認するようにしています。

オンライン開催のときは、別の論点が出る

画面越しの回では、また事情が変わります。参加者の顔が画面に並ぶ状態をそのまま記録すると、本人が意図していない範囲まで残ることがあります。

私たちがオンラインでやっているのは、録画する場合は事前に明示すること、そして記録を残す必要がある場合も、参加者の映像ではなく講師側の画面共有だけを対象にすることです。学校や施設との連携でオンラインを使う場合、この点は先方の規程と突き合わせる必要があるので、打ち合わせの早い段階で議題に出します。

チェックリスト:開催前に決めておく5つ

  1. 同意を取る場所を決める申込フォームか、当日か。原則は申込時。当日参加がある場合の受け皿も用意する。
  2. 目的と期間を文面にする媒体の列挙ではなく、目的の特定と「撮影日から◯年」の明示。
  3. 第三者提供にあたる部分を分ける協賛企業・共催団体・自治体の広報物は独立した項目にして、個別にチェックを取る。
  4. 断った方の目印を決める撮影担当が遠目で判別でき、かつ目立ちすぎないもの。口頭申し送りにしない。
  5. 顔なしカットを撮影計画に入れる手元・遠景・後ろ姿。各シーンで1枚ずつ確保する。

あとから「取り下げてほしい」と言われたときの手順

同意を得て掲載した写真でも、あとから取り下げの申し出が来ることがあります。家庭の事情が変わることもあれば、子ども本人が成長して「載っているのが嫌だ」と言うこともあります。

このとき大事なのは、判断を挟まずに応じられる体制をつくっておくことです。「同意をいただいているので」と押し返さない。掲載を続ける正当性を主張できたとしても、その関係を失う方がはるかに高くつきます。

実務としては、問い合わせの窓口を1つに固定し、掲載箇所をすぐ洗い出せるよう写真の使用先を記録しておくことです。これをやっていないと、「どこに載せたか分からない」という理由で対応が遅れます。印刷済みの配布物のように回収できないものについては、次の増刷から差し替えることを伝えて合意を取ります。

デジタルキッズクラブの横断幕
撮影のルールは、参加者との信頼を保つための取り決めです。法的に守られる範囲より、少し手前で線を引いておく方が続きます。

まとめ

写真の許諾は、当日の手続きの問題に見えて、実際には企画段階の設計の問題です。申込フォームに一項目入れておくか、期間を年数で切っておくか。その判断が、翌年の担当者が使える素材の量を決めます。

そして、許諾が取れないことを前提にした写真を必ず持っておくこと。これが、いちばん実用的な保険でした。

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よくある質問

Q. 子どもの写真を使うのに、必ず同意書は必要ですか。

A. 法律上の要否は目的・媒体・写り方によって変わります。ただ実務としては、同意を書面またはフォームで取得しておく方が、あとの判断が圧倒的に速くなります。個人情報保護法の観点では、利用目的の特定と通知または公表が求められる点に注意してください(2026年9月時点)。

Q. 同意書はいつ取るのが現実的ですか。

A. 事前申込のフォームに項目を入れるのが最も確実です。受付での記入方式は開場直後に列が滞り、「あとで」と言ったまま取得できずに終わることが多いためです。

Q. 使用範囲はどう書けばいいですか。

A. 媒体名を列挙するより、利用目的を特定したうえで「撮影日から◯年」と期間で区切る方が運用しやすくなります。列挙方式は、書いていない媒体が出るたびに判断が必要になります。

Q. 協賛企業の広報物に使う場合も同じ同意で足りますか。

A. 主催者以外による利用にあたる可能性があるため、独立した項目にして個別にチェックを取ることをおすすめします。そのうえで、チェックがない方の写真を使わなくても運営が成立するよう、写真の使い分けを設計しておきます。

Q. 撮影を断られた場合、どう運営すればいいですか。

A. 目立たない目印で撮影担当が判別できるようにし、受付で理由は聞かず、同意の有無で参加できる内容を変えないことです。断ることのコストを下げておかないと、参加そのものの障壁になります。

この記事を書いた人

デジタルキッズクラブ(運営:lanitech合同会社)/西脇 靖紘

デジタルキッズクラブ 代表。愛媛・東京・千葉・愛知で、子どもがデジタルの道具に直接手を伸ばす一日一日をつくっています。これまでに延べ1,000名以上の子どもと保護者に体験を届けてきました。愛知淑徳大学ではAI関連科目の非常勤講師も務めており、日々AI×教育と向き合っています。これら記事の内容は、私たちの現場での運営や観察にもとづいています。

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