本文へスキップ

HOME コラム

不登校とオンライン体験|向く3つの場面と、向かない場面

不登校とオンライン体験|向く3つの場面と、向かない場面

「オンラインなら参加できるかもしれない」。
学校や支援の現場からいただくご相談で、いちばん多い言い方がこれです。
私たちはオンラインのワークショップをやっているので、こう言われると嬉しいのですが、
オンラインにすれば届く、という話ではありません。
向く場面と、はっきり向かない場面があります。実施する側として、両方書きます。

この記事の要点

  • 「出席扱い」は外部の事業者が単独で満たせる制度ではない。先に在籍校との話になる。
  • オンラインが向くのは、画面の向こうに手を動かす対象があるとき。会話が主目的だと続きにくい。
  • 1回で終われること、作ったものが物になって届くことが、次につながる条件になりやすい。
  • 向かない場面も正直に書きました。私たちは「点」しか持っていません。

相談は、たいてい「オンラインなら来られるかも」から始まる

教室には入れない。でも家ではタブレットを触っている。
だから画面ごしなら、何か届くのではないか。この見立て自体は、だいたい当たっています。

ただ、そのあとに起きることは分かれます。うまく続く場合と、
2回目の接続で切れてしまう場合がある。そして両者を分けているのは、
本人の状態よりもその回に何をやったかであることが多い、というのが私たちが見てきた範囲での実感です。

タブレットを操作する子どもの手元
画面の向こうに手を動かす対象があるかどうかで、2回目が起きるかどうかが変わります。

まず事実|不登校は35万人台で、12年続けて増えている

文部科学省の「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」によると、
小・中学校の不登校児童生徒数は約35万4千人で、12年連続の増加です
(調査結果と関連通知の公表は2025年10月29日。2026年9月時点で、これが最新の年度です)。

この数字を出すのは、危機感をあおるためではありません。
人数がこの規模になると、一つの形では収まらないということを確認しておきたいからです。
学校に戻ることを目指す子、別の場所を探している子、いまは何もしない時間が必要な子。
オンラインのデジタル体験が意味を持つのは、このうち限られた場面だけです。

「出席扱い」の話を、先に片づけておく

ご相談のとき、ほぼ必ず出席扱いの話になります。先に整理しておきます。

指導要録上の出席扱いについて、文部科学省は要件を示しています(義務教育段階。
おおもとは令和元年10月25日の「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」です)。
自宅でICT等を活用した学習活動を行った場合の主な要件は、次のように整理されています。

自宅でのICT等を活用した学習活動の主な要件(文部科学省の資料より)

  • 保護者と学校との間に十分な連携・協力関係が保たれていること
  • 訪問等による対面指導が定期的かつ継続的に行われることを前提とすること
  • 学習活動は、当該児童生徒の学習の理解の程度を踏まえた計画的な学習プログラムであること
  • 校長は、当該児童生徒に対する対面指導や学習活動の状況等について、十分に把握すること
  • ICT等を活用した学習活動を出席扱いとするのは、基本的に学校外の公的機関や民間施設において相談・指導を受けられないような場合に行う学習活動であること

並べてみると分かります。要件の主語が、ほとんど「学校」と「保護者」です。
外部の事業者が単独で満たせる作りになっていません。

私たちの実施だけでは、出席扱いにはなりません

はっきり書いておきます。デジタルキッズクラブのオンラインワークショップを受けたことをもって、
出席扱いになることはありません。私たちはフリースクールでも学習支援事業者でもなく、
対面指導を定期的かつ継続的に行う立場にもないからです。

ですので、出席扱いを目的にご相談いただいた場合、最初にお伝えするのは
「まず在籍校にご相談ください」です。そのうえで、学校側が組む計画の中に
一つの活動として入れる形であれば、内容と回数をあわせて設計できます。
順番が逆になると、どちらも動きません。

私たちが提供できるのは、出席の記録ではなく、手が動いた時間そのものです。

向く場面1|画面の向こうに、手を動かす対象があるとき

オンラインで続きにくいのは、会話が中心の回です。「調子はどう?」から始まる時間は、
本人にとって負荷が高いことがあります。カメラを切っていても、答える役が回ってくるからです。

一方、画面の中に操作する対象があると、役割が変わります。
本人は「答える人」ではなく「動かす人」になる。
3Dモデリングのように、画面の中で形を作っていく内容は、この点で相性がいいです。
会話をしなくても、手は動いている状態を作れます。

01
話さなくていい
カメラも音声も必須にしていません。チャットだけ、あるいは何も返さなくても進みます。
02
途中で抜けられる
作りかけのデータは残ります。しんどくなった時点で閉じても、次に続きから始められます。
03
正解がない
形を作る作業には、できた・できないの線がありません。評価される感じが出にくい内容です。

向く場面2|「1回だけ」で終われるとき

続けることを前提にした誘いは、本人にとって重い約束になります。
来週も、再来週も、という前提が見えた時点で断られることがあります。

だから最初は、1回で完結する形にするのをおすすめしています。
生成AIで絵をつくる内容は1コマ単発で成立するので、この用途に向きます。
言葉を入れて絵を出し、思ったのと違ったら言葉を変えてまた出す。それだけで1回分になります。

ここで起きやすい失敗

1回目がうまくいくと、つい「来週も」と言いたくなります。
けれど、こちらから次を提案した回ほど、2回目が来ません。
次があるとしたら本人の側から出てくるので、こちらは「またやりたくなったら」で止めておくほうが、結果的に続きます。

向く場面3|作ったものが、物になって届くとき

画面の中で完結する体験は、終わった直後から薄れていきます。
ところが、作ったものが実際に物として手元に届くと、そこで一度止まります。

私たちは、3Dモデリングで作ったデータをこちらで出力して郵送しています。
レーザーで名前を彫ったものも同じです。学校に機材がなくても、家に機材がなくても成立します。

届いた物には、もう一つ役割があります。家族に見せる口実になることです。
本人が何をしていたかを説明しなくても、物が説明してくれる。
学校の話をせずに済む会話が家庭に一つ増えるのは、それだけで意味があると考えています。

デジタルキッズクラブののれんが掲げられた会場
画面で完結させないこと。手元に届くところまでを一つの体験として組んでいます。

向かない場面を、正直に書きます

ここが、この記事でいちばん書いておきたいところです。

向かない場面

  • 画面に出ること自体が負担になっている場合。 カメラを切っていても、決まった時刻に接続するという約束が重いことがあります。この段階では、約束のない形のほうが先です。
  • 継続的な居場所が必要な場合。 私たちが渡せるのは1回、あるいは数回です。毎日行ける場所の代わりにはなりません。
  • ドローンや電子楽器のように、その場でしか成立しない体験を期待されている場合。 これはオンラインでは無理です。現地に伺う形でしか渡せません。
  • 学習の遅れを取り戻すことが目的の場合。 私たちは学習支援をしていません。教科の補充としては機能しません。

特に2つ目について、もう少し書かせてください。

手放した「線」のこと

私たちデジタルキッズクラブは、2023年から2024年にかけて、今治に常設の拠点を持っていました。
8歳から18歳まで、ずっと無料で、週に3〜4日開けていました。
学校に行っていないからこそ来られる時間帯として、平日の日中にも開館時間を設けていました。

結果として、午前はフリースクールの生徒が、放課後には部活動のような形で子どもたちが集まる場所になりました。
慣れない場所や人に馴染むのに時間がかかるお子さんが、珍しく「また行きたい」と言った、
という声もいただきました。

その拠点は、いまはもうありません。私たちは各地でひらくイベントと、
出張・オンラインのワークショップの3つに形を変えました。
つまり、「線」を手放して「点」だけになったということです。

点には点の強さがあります。一日に密度を集められるし、どこへでも行けます。
けれど、平日の日中にいつでも開いている場所が果たしていた役割は、いまの形では拾えていません。
オンラインが向かない場面の2つ目は、私たち自身が手放したものについての話でもあります。

どのコースが、どの場面に向くか

コース 回数の目安 向いている場面
生成AI 1コマ単発から まず1回だけ。約束を軽くしたいとき
3D・CG 5〜10コマ 時間をかけて形にしたいとき。作品は出力して郵送
デジタルアート 数回〜 作ったものをコンテストに出すところまで行きたいとき
ドローン・電子楽器 オンライン不可 現地に伺う出張ワークショップで実施

コースの詳細はオンラインワークショップのページに置いています。
形を作るところから始めたい場合は3D・CGコース、
出口まで用意したい場合はデジタルアートコースが該当します。

1回目に起きやすい、地味なつまずき

内容の設計よりも先に、接続まわりで止まることがよくあります。
どれも小さい話ですが、1回目でつまずくと2回目が来ないので、ここは軽く見ないほうがいいです。

  • 表示名が本名になっている。 参加者一覧に本名が並ぶと、それだけで負荷になる子がいます。事前にニックネームに変えられることを伝えておきます。
  • カメラが自動でオンになる。 接続した瞬間に顔が映る設定は、最初の回では外しておきます。既定でオフにしておくのがおすすめです。
  • 学校の端末で外部サイトが開けない。 ブラウザで動くツールを使う場合でも、フィルタリングで止まることがあります。前日までに一度、実際の端末で開いてみてください。
  • 音が聞こえない側が分からない。 声を出さない前提で進めると、こちらの音が届いていないことに最後まで気づけません。最初にチャットで一言だけ返してもらう合図を決めておきます。

とくに3つ目は、学校を通した実施でよく起きます。
「オンラインで実施できます」と言っても、端末の側で開けなければ何も始まりません。
私たちも当日になって気づいたことがあり、その回は内容を差し替えて進めました。

学校側で先に決めておくと早い3つ

ご相談をいただいてから実施までが早い場合、たいてい次の3つが先に決まっています。
逆に、ここが決まっていないと往復が増えます。

だれが同席するか
担任の先生か、支援員の方か、あるいは誰も同席しないか。同席者がいるかどうかで、こちらの話しかけ方が変わります。
どこから接続するか
自宅か、別室登校の部屋か、放課後等デイなどの施設か。場所によって、端末も回線も制約が変わります。
終わったあと、何をどこに残すか
作品だけ本人に渡すのか、実施の記録を学校にも出すのか。出席扱いを検討している場合は、ここが後から必要になります。

3つ目は忘れられがちですが、あとから記録を作るのはほぼ不可能です。
何を残すかは、実施する前に決めておくしかありません。

相談から実施までの流れ

  1. 目的をひとつに絞る
    出席扱いなのか、本人が手を動かす時間なのか、家庭との会話なのか。
    複数を同時に狙うと、どれも中途半端になります。
  2. 出席扱いが目的なら、先に在籍校と話す
    要件の主語が学校と保護者である以上、ここが起点になります。私たちの出番はそのあとです。
  3. 人数・回数・使える端末を教えていただく
    1人でも、数人でも組めます。端末が1人1台でない場合も、その前提で設計します。
  4. 1回目は「見るだけでもいい」形にする
    接続して、何もせずに終わっても成立する設計にしておきます。ここを詰めすぎないほうが続きます。
  5. 作品が出る回まで来たら、郵送まで含めて区切る
    物が届いたところで一度終わりにします。次を決めずに終わるのが大事です。
子ども向け体験イベントの会場全景
現地でしか成立しない体験もあります。オンラインは代わりではなく、別の入口です。

授業・行事への出張を承っています

学校・フリースクール・放課後等デイサービスなどからのご相談を承っています。対象学年・人数・回数だけ書いていただければ、こちらから組み方をご提案します。

出張・オンラインの相談をする

すでにご検討中の方は こちらから直接ご相談ください。

よくある質問

Q. オンラインのワークショップを受けたら、出席扱いになりますか。

私たちが実施するだけでは、なりません。指導要録上の出席扱いは、学校と保護者の連携、定期的かつ継続的な対面指導、理解の程度を踏まえた計画的な学習プログラム、校長による把握といった要件で判断されるもので、外部の事業者が単独で満たせる形になっていないためです。在籍校にご相談いただくのが先になります。

Q. カメラと音声は必須ですか。

必須にしていません。顔を出さない、声を出さない状態でも、画面の中で手が動く内容であれば成立します。むしろ最初の回は、こちらから一方的に進めて、本人はチャットだけ、という形のほうが続きやすいです。

Q. 1回だけお願いすることはできますか。

できます。生成AIのコースは1コマ単発での実施に向いています。3Dモデリングのように作品を仕上げるところまで行く内容は、5〜10コマで組むことが多いです。

Q. 学校に3Dプリンターがなくても大丈夫ですか。

大丈夫です。データをこちらで受け取って出力し、学校またはご自宅にお送りします。手元に物が届くところまでを含めて一つの体験として組んでいます。

Q. 放課後等デイサービスやフリースクールでも実施できますか。

実施しています。場所の性格に合わせて、時間の区切り方と1人あたりの分量を変えています。人数が少ない場合は、進む速さを本人に合わせられるぶん、かえって組みやすいことが多いです。

この記事を書いた人

デジタルキッズクラブ(運営:lanitech合同会社)/西脇 靖紘

デジタルキッズクラブ 代表。愛媛・東京・千葉・愛知で、子どもがデジタルの道具に直接手を伸ばす一日一日をつくっています。これまでに延べ1,000名以上の子どもと保護者に体験を届けてきました。愛知淑徳大学ではAI関連科目の非常勤講師も務めており、日々AI×教育と向き合っています。これら記事の内容は、私たちの現場での運営や観察にもとづいています。

コラム一覧へ

次の開催をお知らせします

次回のデジタルキッズフェスは準備中です。
LINEの友だち追加で、日程と会場が決まりしだい、追加いただいた方から先にご案内します。

メールでお知らせを受け取る

前回のレポートを読む レポート|デジタルキッズフェス in 西別院(2026年1月・名古屋)