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生成AIで絵をつくるのは「ずるい」のか。子どもにどう説明するか

生成AIで絵をつくるのは「ずるい」のか。子どもにどう説明するか

子どもがタブレットで数秒のうちに絵を出してきて、それを見た大人が言葉に詰まる。あるいは、子ども自身が「これってずるいのかな」と聞いてくる。この場面は、もう特別なことではなくなりました。この記事では、その問いに大人がどう答えるかを、答えを持っているふりをせずに整理します。

この記事の要点

  • 「ずるい」という言葉は、多くの場合ルール違反の話ではなく、努力と結果が釣り合っていない感覚から出ています。まずそこを切り分けてください。
  • 子どもに説明するときは、善悪で答えず「誰の役に立てたいか」「自分の手をどこに残すか」「外に出すときに何を言うか」の3つに分けると話が進みます。
  • 家庭のルールは禁止か許可かの二択にしないほうが持ちます。使っていい場面と、名乗り方だけを決めておくと運用できます。
  • 向かないケースもあります。作ること自体への自信がまだ育っていない時期に生成AIを主役にすると、手を動かす機会がそのまま減ります。

「ずるい」という言葉が出てくるのは、だいたい3つの場面

大人が身構えるのは、たいてい次のどれかです。子どもが自分の作品として生成AIの絵を出したとき。友だちの作ったものを見て子どもが「あれはずるい」と言ったとき。そして、宿題や応募作品に使っていいのか判断を求められたとき。

この3つは、見た目が似ているだけで中身がまったく違います。1つ目は本人の自己評価の話、2つ目は他人との比較の話、3つ目はルールの話です。ここを混ぜたまま「AIはずるくないよ」と返しても、子どもの側には何も届きません。返事が的外れに聞こえるからです。

私たちがワークショップの現場で聞く「ずるい」は、圧倒的に1つ目と2つ目です。ルールを気にして言っている子は、実はあまりいません。多くの子が気にしているのは、自分がえらいのか、道具がえらいのかという一点です。

タブレットを操作する子どもの手元
手元だけを見ていると、何をどこまで自分で決めたのかは外からは分かりません。それは大人にも、本人にも分かりにくいことです。

子どもが本当に聞いているのは、善悪ではない

「ずるいのかな」と聞いてくる子に、「ずるくないよ、道具だから」と答えると、たいてい会話はそこで終わります。終わってしまうのは、その答えが間違っているからではなく、聞かれていないことに答えているからです。

子どもが確かめたいのは、この絵をほめられたときに、自分は素直に喜んでいいのか、ということです。つまり評価の受け取り方の問題です。そう考えると、答えるべきことは変わります。どこまでが自分の判断だったのかを、一緒に数えてみればいい。

言葉を選んだのは誰か。何回やり直したのか。出てきた候補のうち、どれを選んだのか。どこが違うと思って選び直したのか。この4つを聞いていくと、たいていの子は自分がかなりの回数手を入れていることに気づきます。気づいたあとの表情は、こちらが説明したときとはっきり違います。

聞き方の例

「何回やり直した?」から入るのがいちばん抵抗がありません。回数は事実なので、子どもが評価されていると感じずに答えられます。そのあとで「どこを直したかったの」と聞くと、本人の意図が言葉になって出てきます。

事実として何が起きているのかを、先に分けて置く

説明の前に、大人の側が状況を整理しておくと話が早くなります。生成AIで絵をつくるという行為は、ひとかたまりではありません。いくつかの作業が混ざっていて、そのうちAIがやっている部分と人がやっている部分ははっきり分かれます。

工程 おもにAIがやること 人が決めていること
何をつくるか決める ほとんど関与しない 題材、目的、誰に見せたいか。ここは全部が人の側。
言葉にする 言葉から絵を組み立てる どんな言葉を選ぶか。伝わらなければ言い換える。
候補から選ぶ 複数の案を出す どれを採るか、なぜそれかの判断。
直す 指示どおりに描き直す どこが違うと感じたか、その言語化。
仕上げて出す 関与しない これで完成でいいかの決断と、外に出すときの説明。

こうして並べると、子どもがやっている部分は思ったより多いことが分かります。同時に、「絵を描く技能」そのものは肩代わりされていることも、ごまかさずに見えます。両方を認めるのが、いちばん子どもに信用される説明です。片方を隠すと、子どもはすぐに気づきます。

説明のための3つの軸

善悪で答えないと決めたあと、では何を話すのか。私たちは次の3つに分けて話しています。この順番にも意味があって、1から順に本人の外側へ広がっていきます。

AXIS 1
誰に届けたいのか
その絵を誰に見せたいのかを先に聞きます。相手が決まると、AIを使うかどうかは目的に対する手段の話になり、ずるいかどうかの話から自然に離れます。
AXIS 2
自分の手をどこに残すか
全部をAIに任せる必要はありません。背景だけ、色だけ、配置だけでも自分でやると決めておくと、本人の中で作品の所有感が保たれます。
AXIS 3
外に出すとき何と言うか
使ったことを言えるかどうか。言えるなら問題は起きにくく、言いたくないなら、その理由の中に本人が引っかかっているものがあります。

3つ目がいちばん強力です。「使ったって言える?」と聞いたときに口ごもる子は、自分でも納得できていないところがあります。逆に、迷いなく「言える」と答える子は、すでに自分の中で整理がついています。この質問は、大人が判定しなくても本人が判定してくれるところが優れています。

家庭で決めておくと、あとが楽になること

ルールを禁止か許可かの二択にすると、だいたい半年で形骸化します。使っていい場面と、名乗り方だけを決めるほうが持ちます。

  1. 提出物かどうかで分ける学校に出すもの、コンクールに出すものは、その募集要項に従う。ここは家庭の判断ではないと決めておくと、毎回もめません。
  2. 遊びは自由にしておく自分と家族しか見ないものは、制限しない。ここを縛ると、道具の使い方を覚える機会がなくなります。
  3. 外に出すときは使ったと書くSNSや作品発表に出すときは、使ったことを書く。書けないなら出さない。この一行だけで、ほとんどの問題は起きなくなります。
  4. 人の顔と名前は入れない実在の人物や、友だちの写真をもとにした生成は避ける。これは年齢にかかわらず、はじめに伝えておいたほうがいい線です。

やってみると、よく起きること

現場から

生成AIを扱う回で毎回起きるのは、最初の5分で全員が同じような絵を出し、そのあと急につまらなくなる、という展開です。思いどおりのものが出ないからではありません。逆で、そこそこのものがすぐ出てしまうので、次にやることがなくなるのです。

面白くなるのは、「もっとこうしたい」が本人の中に出てからです。そこから言葉を変え、候補を比べ、選び直す時間が始まります。この時間に入れた子は、帰るときに自分の作品の話をします。入れなかった子は、AIの話をします。

つまり、生成AIを使った時間が本人に残るかどうかは、AIの性能ではなく、「もっとこうしたい」が出てきたかどうかで決まります。大人が手伝えるとしたら、そこを待つことです。すぐ出るものを見て「すごいね」で終わらせると、その先には行きません。

向かないケースと、うまくいかなかったこと

すべての子に、いつ使わせてもいいとは思っていません。私たちが実際にうまくいかなかった場面を書きます。

うまくいかなかったこと

  • 自分の絵に自信がない子が、はじめて触れる道具として生成AIを選んだとき。出てきたものと自分の絵を比べてしまい、そのあと手描きに戻れなくなりました。順番を逆にするべきでした。
  • 兄弟で同時にやらせたとき。片方が先に良いものを出すと、もう片方は言葉を工夫する前に諦めます。同じ机で同時に、は避けたほうが無難です。
  • 「自由につくっていいよ」とだけ言った回。題材が決まっていないと、ほとんどの子は5分で止まります。制約があったほうが、この道具は面白くなります。
  • 大人が先に良い例を見せてしまった回。基準がそこに固定されて、自分のやりたいことが出てこなくなりました。

特に1つ目は、何度か繰り返してから気づいたことです。生成AIは、すでに何かをつくった経験がある子のほうが、ずっと面白く使います。比べる対象が自分の中にあるからです。まだ何もつくったことがない時期に主役として渡すのは、今のところ勧めていません。

判断を1枚に落とす

迷ったときに見る表として、次の形に落としておくと家庭では回ります。

場面 使ってよいか ひとこと添えるなら
家で遊びとしてつくる 制限しない 「何回やり直した?」と聞くだけで、時間の質が変わります。
学校の提出物に使う 募集要項・先生の指示に従う 家庭で決めることではない、と最初に伝えておく。
コンクール・公募に出す 要項の規定を必ず確認する 規定がないものは、使ったと書いて出せるかで判断する。
SNSなど外に公開する 使ったと書けるなら可 書けないと感じたときは、その理由を聞いてみる。
友だちの写真をもとにつくる やらない 年齢にかかわらず、ここは線を引いておく。

「ずるい」を急いで否定しないほうがいい

ずるいと感じる感覚は、努力と結果の釣り合いを測っているということです。その感覚があるほうが、道具との距離をうまく取れます。

大人はつい「ずるくないよ」と先回りします。けれど、その違和感は子どもの中の健全なセンサーでもあります。急いで消してしまうと、次に何かを手軽に得たときにも、何も感じなくなります。

だから私たちは、「ずるいと思ったんだね。どこがそう感じた?」と返すようにしています。そこで返ってくる言葉は、その子が何を努力だと思っているかを教えてくれます。大人が一番知りたいのは、本当はそちらのはずです。

私たちが、この道具を現場で使っている理由

デジタルキッズクラブは、教室を持っていません。イベントと、出張やオンラインのワークショップで子どもと会っています。1回きりの出会いが多いので、その一日に何が起きるかだけを見ることになります。

その中で生成AIを扱う回を続けているのは、この道具が「つくる」の入口をひとつ増やすからです。私たちが活動を始めたのは、地域にITで活躍する大人が少なく、子どもがその道を進路として思いつきにくいという課題があったからでした。絵が描けないから無理だと自分を外していた子が、言葉でなら入れると気づく場面を何度も見ています。

ただし、答えを持っているわけではありません。AIが日常に入ってきたこの数年、子どもに何をどう渡すのが正しいのかは、誰にも分かっていません。私たちも分かっていません。そのうえで賭けているのは、AIに使われる側ではなく使う側に立てるかどうかと、自分の手を動かして得た経験の価値がこれから上がるだろうということです。生成AIを触らせるのは、その両方に関わるからです。オンラインで扱っている内容は 生成AIのワークショップ に、出張で伺う形は 出張ワークショップ にまとめてあります。

大人が一度、自分でやってみておく

この話題で子どもと噛み合わなくなるのは、たいてい大人の側が一度も触っていないときです。触っていないと、「すごい絵が一瞬で出る道具」という像のまま話すことになります。実際に触ると、その像がかなり違うことが分かります。

思ったとおりのものは、そう簡単には出ません。言葉を足しても、意図しない方向に寄っていきます。何度も言い換えて、ようやく近いものに届く。この体験を一度しておくと、子どもが「やり直した」と言ったときの重みが分かります。

そしてもうひとつ、自分でやってみると気づくことがあります。出てきたものを見て「これじゃない」と判断しているのは、最初から最後まで自分だということです。良し悪しを決める目は、道具の側にはありません。ここが分かっていると、子どもへの説明が具体的になります。

デジタルキッズクラブののれんが掛かった会場
私たちの回でも、保護者の方に同じ課題を出す時間をとることがあります。やってみた大人の説明は、言葉が変わります。

大人が触っておくことの効用は、正しい知識が増えることではありません。子どもの話を具体的に聞けるようになることです。「どんな言葉を入れたの」「何が違ったの」と聞けるのは、その苦労を知っている人だけです。

やらなくていいこと

  • 家庭の方針を完璧に決めること。決まっていない部分があると正直に言ったほうが、子どもは相談してくれます。
  • 危険性を先に全部伝えること。使う前に注意だけを並べると、隠れて使うようになります。
  • 手描きと比べて優劣を語ること。別の道具です。比べた瞬間、どちらかが否定されます。
  • 最新のサービスを追いかけること。どれを使うかより、何をつくりたいかが先です。

よくある質問

Q. 何歳から使わせていいですか。

A. 年齢で線を引くより、これまでに自分で何かをつくった経験があるかで考えるほうが実際的です。比べる対象が自分の中にある子ほど、この道具を面白く使います。

Q. 夏休みの宿題に使ってもいいでしょうか。

A. 学校や募集元の指示に従ってください。家庭で決めることではないと最初に伝えておくと、毎回の判断がぶれません。指示がない場合は、使ったと書いて出せるかどうかを基準にしてください。

Q. 子どもが自分の作品だと言い張ります。

A. 否定せず、どこを自分で決めたのかを一緒に数えてみてください。言葉を選び、候補から選び、直した回数は本人の仕事です。そのうえで、外に出すときは使ったと書こう、と分けて伝えるのが現実的です。

Q. 絵を描く力が育たなくなりませんか。

A. 生成AIだけを使い続ければ、描く技能を練習する時間は減ります。手を動かす時間と併せて置くことをおすすめします。私たちの回でも、描く工程と生成する工程を必ず両方入れています。

Q. 友だちが使っているのを「ずるい」と言います。

A. その感覚を否定せず、どこがそう感じたのかを聞いてみてください。努力と結果の釣り合いを測っている言葉なので、本人が何を努力だと考えているかが分かります。そこから話を広げるほうが実りがあります。

この記事を書いた人

デジタルキッズクラブ(運営:lanitech合同会社)/西脇 靖紘

デジタルキッズクラブ 代表。愛媛・東京・千葉・愛知で、子どもがデジタルの道具に直接手を伸ばす一日一日をつくっています。これまでに延べ1,000名以上の子どもと保護者に体験を届けてきました。愛知淑徳大学ではAI関連科目の非常勤講師も務めており、日々AI×教育と向き合っています。これら記事の内容は、私たちの現場での運営や観察にもとづいています。

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