本文へスキップ

HOME コラム

探究学習のテーマ例|中学校で「調べて終わり」にしないために

探究学習のテーマ例|中学校で「調べて終わり」にしないために

探究学習のテーマ探しで手が止まるのは、テーマが思いつかないからではありません。思いついたテーマが、調べて終わりになってしまうからです。「〇〇について調べました」で発表が終わり、次の学年でまた同じことが起きる。何がその分かれ目になっているのかを、外部講師として中学校に入っている立場から整理しました。テーマ例も挙げますが、例そのものより、例の選び方のほうを持ち帰っていただけると役に立つはずです。

この記事の要点

  • 調べて終わるかどうかは、テーマの良し悪しではなく「問いの形」で決まります。答えが検索で出るかどうかが分かれ目です。
  • 止まらないテーマには共通点が3つありました。実物がある、比べる相手がいる、結果が予想できない、の3つです。
  • テーマ例は7つの型に分けて挙げます。型さえ分かれば、学校ごとの地域資源に差し替えられます。
  • うまくいかなかったのは、社会課題をそのままテーマにした回です。調べる量は増えましたが、生徒の手は動きませんでした。

この記事は、学校や施設に呼ばれてデジタル体験の授業を行っている立場から書いています。総合的な学習の時間を1年通して設計した経験はありませんし、カリキュラム編成の専門家でもありません。制度上の位置づけについては学習指導要領など一次資料をご確認ください。ここに書くのは、外部の講師として探究の途中に入る側から見えている範囲の話です。

会場に設置された体験ブースの遠景
手が動く探究には、たいてい実物が関わっています。画面の中だけで完結するテーマは止まりやすくなります。

「調べて終わり」になるのは、問いの形の問題

テーマ一覧を眺めても解決しないのは、問題がテーマではなく問いの形にあるからです。同じ題材でも、問いの立て方ひとつで止まるかどうかが変わります。

たとえば「地域の高齢化について」は調べて終わります。答えが資料の中にあるからです。一方で「この商店街で、高齢の方が一番困る時間帯はいつか」は止まりません。答えがどこにも書いていないので、行って確かめるしかなくなります。

判定は簡単です。その問いを検索窓に入れて答えが出るなら、それは調べ学習です。探究にするには、検索で出ない問いに作り替える必要があります。

止まらないテーマの共通点は3つ

POINT 1実物がある触れる、行ける、会える対象があること。資料だけで完結するテーマは、途中で熱が下がります。実物があると、予想と違う事実にぶつかるので、問いが勝手に更新されていきます。
POINT 2比べる相手がいる2つ以上を比較する形にすると、手が動きます。1つを深く調べる形は、中学生には荷が重いことがあります。比較対象は、隣の学校でも、去年の自分でも構いません。
POINT 3結果が予想できない先生にも答えが分からない問いを選びます。答えが分かっているテーマは、生徒が「正解探し」を始めるので、途中で手が止まります。分からないことは、先に言ってしまって構いません。

テーマ例を7つの型で挙げる

個別のテーマ名を並べるより、型で持っておくほうが学校ごとに差し替えられます。以下は実際に中学校で走っているのを見た形です。

型 問いの例 止まりにくい理由
①測る 校内でいちばん暑い場所はどこか。時間帯でどう動くか。 データが手元でしか取れない。答えが検索で出ない。
②比べる この町と隣町で、子どもが遊べる場所はどう違うか。 比較軸を自分で決める必要があり、そこが探究になる。
③つくる 学校の課題を解決する道具を設計して、試してもらう。 うまくいかない場面が必ず来るので、改良の往復が生まれる。
④聞く この仕事の人が、一日で一番長くやっていることは何か。 相手の答えが予想と違うことが多く、問いが更新される。
⑤再現する 昔この地域にあった行事を、今の道具で再現できるか。 再現の途中で必ず足りないものが出て、調べ直しが起きる。
⑥伝える この地域の良さを、県外の中学生に3分で伝えるには。 受け手がいるので、伝わったかどうかで評価が返ってくる。
⑦検証する 言われている通説が、この地域でも当てはまるか。 結論が反対に出ることがあり、そこから先が本番になる。

7つのうち、①③⑤は実物が絡むので手が動きやすく、②④⑥⑦は相手がいるので結果が返ってきます。どちらかの性質が入っていれば、途中で止まりにくくなります。

検索で答えが出る問いは、どれだけ良いテーマでも調べ学習で終わる。

テーマを決めるまでの進め方

  1. 興味ではなく、違和感から拾う「何に興味があるか」と聞くと、答えられない生徒が出ます。「おかしいと思ったこと」「前から気になっていること」に置き換えると、出てくる数が変わります。
  2. 検索して、答えが出るか確かめる出てきた問いを、その場で検索させます。1ページ目で答えが出たら、その問いは採用しません。ここを最初にやると、あとの手戻りが減ります。
  3. 対象を地域まで絞る「日本の」を「この市の」に置き換えるだけで、検索で出ない問いに変わることが多くあります。絞るほど、行って確かめる必要が出てきます。
  4. 手を動かす日を先に決める調べる期間を長く取ると、調べるだけで終わります。3回目までに一度は外に出るか何かをつくる、と先に決めておくほうが進みます。

うまくいかなかったこと

現場から:社会課題をそのままテーマにした回

大きな社会課題をテーマに据えた学年に関わったことがあります。調べる材料は無限にあるので、資料は分厚くなりました。ただ、最後まで生徒の手が動きませんでした。自分が何かできる実感が持てないと、調べる作業だけが残るようです。以後、大きなテーマを扱うときは「この学校で今日できること」まで必ず降ろすようにしています。

現場から:テーマを自由にしすぎた回

制約を設けずに「何でもいいです」と伝えたところ、決まらない班が半数を超えました。選択肢が多すぎると選べなくなるという、よくある形です。7つの型のような枠を先に渡して、その中から選んでもらうほうが早く決まり、内容も深くなりました。自由度は、決まったあとに上げるほうが機能します。

向かないケース

ここまで書いた形が合わない場面もあります。

ひとつは、確保できる時間が全体で数コマしかない場合です。外に出たり実物に触れたりする形は、どうしても時間を使います。時間が足りないなら、無理に探究の形にせず、調べ学習として設計したほうが生徒にとって親切だと思います。中途半端に探究の形だけ真似ると、発表の質だけが下がります。

もうひとつは、評価を成績に強く結びつけている場合です。結果が予想できないテーマは、失敗が起こります。失敗が減点になると分かっていれば、生徒は安全なテーマを選びます。このとき選ばれるのは、必ず「調べて終わる」テーマです。

やらなくていいこと

テーマを先生側で用意して配る必要はありません。型だけ渡して、中身は生徒に決めてもらうほうが進みます。また、途中経過をきれいにまとめさせる作業も省いて構いません。中間発表の資料づくりに時間を取られて、肝心の手が動かなくなる例をいくつも見ました。途中は、口頭の共有で十分です。

デジタルの道具を入れる場合

探究の中盤で行き詰まったときに、道具を変えると進み出すことがあります。特に「つくる」「再現する」「伝える」の型では、デジタルの道具が有効に働く場面があります。

たとえば、考えた道具の形を3Dモデリング体験で実際に出力してみる。頭の中の設計が現物になると、その瞬間に問題点が10個くらい見つかります。これが次の問いになります。地域の紹介を映像制作の形でまとめる場合も、受け手を想定する作業が自然に入ります。

1コマ20〜30分、1回あたり6〜10名程度が目安で、機材はこちらで持ち込みます。オンラインでの実施にも対応しており、遠方の学校でも同じ内容を組み替えて行っています。探究の一部として、中盤に1回入れる形が多くなっています。

タブレットを操作しながらドローンを動かす子どもの手元
道具を変えると、止まっていた問いが動き出すことがあります。入れるのは中盤が効きました。

私たちがこの活動をしているのは、地域にITで活躍する大人が少なく、子どもがその進路を身近に感じにくい状況があるからです。答えを教える場をつくりたいわけではありません。AI時代に何が正解かは誰も持っていませんし、私たちも持っていない。生成AIが答えらしきものをすぐ出すようになった今こそ、答えが出てこない問いを扱う時間の価値が上がっていると考えています。

生成AIが使える前提で、問いをどう立てるか

生徒が生成AIを使える環境にある場合、問いの設計はさらに絞られます。「調べれば分かること」の範囲が、検索より広くなったからです。

実際に試してみると分かりますが、先ほど挙げた7つの型のうち、①測る・③つくる・⑤再現するは生成AIでは代替できません。手元のデータや現物が必要だからです。逆に②比べる・⑥伝えるは、下書きまでならAIが出してしまいます。

とはいえ、それは悪いことではないと思っています。AIが出した比較表が正しいかどうかを地域で確かめる作業は、それ自体が探究になります。使わせない方向で設計するより、AIが出した答えを検証する側に生徒を置くほうが、結果として深いところまで行きました。

評価をどう設計するか

探究で扱う問いの質を上げようとすると、必ず評価の話にぶつかります。結果が予想できないテーマを選ばせておいて、成果物の完成度で評価すると、生徒は次から安全なテーマを選びます。

関わった学校のうち、うまく回っていたところは、評価の対象を成果物から過程に移していました。具体的には、問いが途中で何回更新されたか、予想と違った事実をいくつ記録したか、といった点を見ています。これなら、結論が出なくても評価できます。

もうひとつ有効だったのは、失敗を書く欄を評価シートに作っておく形です。欄があると書きますし、書けば減点されないことが分かります。失敗を書ける欄があるかどうかで、選ばれるテーマの種類が変わります。

小学校の探究と、何が変わるか

小学校で同じ型を使う場合との違いも書いておきます。中学生のほうが情報収集は速いのですが、そのぶん「調べ終わった」と判断するのも速くなります。

小学生は、調べても分からないことがあると素直に止まって聞きにきます。中学生は、分からない状態を見せたくないので、分かった形にまとめてしまう傾向がありました。そのため中学校では、問いが更新されたことを歓迎する合図を、先生側から先に出しておく必要があります。

逆に中学校で有利なのは、外部と接触する型が使いやすいことです。地域の事業者に連絡を取る、アポイントを入れる、といった作業を自分たちでこなせます。④聞く・⑥伝えるの型は、中学校のほうが深いところまで行きました。

当日おねがいしていること

  • テーマを先生側で用意せず、生徒が決めた問いのまま持ってきていただくこと
  • その回の様子を成績に反映しないと、生徒に先に伝えていただくこと
  • うまくいかない班が出ても、途中で助け舟を出さずに見ていただくこと
  • 中間のまとめ資料づくりに、時間を割きすぎないこと
  • 終了後の振り返りで、予想と違った点を拾っていただくこと

1年で完結させなくていい

最後に、期待値の話です。探究が1年で完結することは、あまりありません。年度末の発表会に合わせて無理にまとめると、最後の2か月が発表準備の時間になります。

途中で終わっている状態のまま次の学年に渡す形を取っている学校もありました。前の学年の問いを引き継いで続ける形です。テーマの質より、続いていること自体が効いている印象があります。区切らないと評価できないという制約はありますが、評価の都合でテーマを小さくしてしまうと、結局「調べて終わり」に戻ってしまいます。

Q. 探究学習が「調べて終わり」になるのは、なぜですか。

A. テーマではなく問いの形が原因であることが多いです。検索して1ページ目で答えが出る問いは、どれだけ良いテーマでも調べ学習になります。対象を地域まで絞ると変わります。

Q. 中学校の探究テーマは、どう選べばいいですか。

A. 実物がある、比べる相手がいる、結果が予想できない。この3つのどれかが入っていると止まりにくくなります。測る・比べる・つくる・聞く・再現する・伝える・検証するの7つの型から選ぶ方法もあります。

Q. テーマは先生が用意したほうがいいですか。

A. 型だけ渡して、中身は生徒に決めてもらうほうが進みました。完全に自由にすると決まらない班が増えるので、枠を用意して中身を空けておく形をおすすめします。

Q. 生成AIが使える環境では、探究は成立しますか。

A. 成立します。測る・つくる・再現する型は手元のデータや現物が必要なので代替されません。AIが出した答えを地域で検証する側に生徒を置く形も有効でした。

Q. 外部講師は、探究のどの段階で入れるのが効果的ですか。

A. 中盤が多いです。問いが立ったあと、行き詰まった段階で道具を変えると進み出すことがあります。1コマ単発でも、オンラインでも実施しています。

この記事を書いた人

デジタルキッズクラブ(運営:lanitech合同会社)/西脇 靖紘

デジタルキッズクラブ 代表。愛媛・東京・千葉・愛知で、子どもがデジタルの道具に直接手を伸ばす一日一日をつくっています。これまでに延べ1,000名以上の子どもと保護者に体験を届けてきました。愛知淑徳大学ではAI関連科目の非常勤講師も務めており、日々AI×教育と向き合っています。これら記事の内容は、私たちの現場での運営や観察にもとづいています。

授業・行事への出張を承っています

対象学年・人数・回数をお知らせいただければ、こちらから組み方をご提案します。探究の中盤に1回だけ、という形でも実施しています。

出張・オンラインの相談をする

すでにご検討中の方は こちらから直接ご相談ください。

コラム一覧へ

次の開催をお知らせします

次回のデジタルキッズフェスは準備中です。
LINEの友だち追加で、日程と会場が決まりしだい、追加いただいた方から先にご案内します。

メールでお知らせを受け取る

前回のレポートを読む レポート|デジタルキッズフェス in 西別院(2026年1月・名古屋)