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探究学習とAI|子どもが伸びるのは「答えが出ない時間」だった

探究学習とAI|子どもが伸びるのは「答えが出ない時間」だった

探究学習に生成AIを取り入れる。テーマ設定も、情報収集も、まとめも速くなる。実際、速くなります。ただ、速くなった探究が、子どもにとって深くなっているとは限りません。

最初に断っておきます。私たちは学校の授業を何百コマも持っている団体ではありません。この記事に書くのは、イベントや出張ワークショップの現場で、子どもが道具に触れる瞬間を横で見てきた観察です。授業への当てはめは仮説として読んでください。

その上で、いちばんお伝えしたいことを先に書きます。子どもが伸びていると感じられるのは、答えが出ている時間ではなく、答えが出ていない時間のほうでした。

AIを入れると、探究は速くなる。速すぎることがある

探究のプロセスは、おおまかに「問いを立てる → 調べる → 作る → まとめる → 伝える」と並びます。生成AIは、このうち「調べる」と「まとめる」を極端に短縮します。

問題は、短縮されたぶんの時間がどこに行くかです。多くの場合、余った時間は次の工程に前倒しされます。結果として、迷っている時間、行き詰まっている時間、やり直している時間がまとめて消えます。探究のプロセスは全部通っているのに、子どもが何かを掴んだ手応えだけがない、ということが起こり得ます。

現場で見ている「止まる時間」

3Dプリンターの体験で、子どもは必ず一度止まります。画面のなかでは成立していた形が、印刷すると倒れる、折れる、思ったより小さい。このとき子どもは数十秒黙り、それから「じゃあここを太くする」と自分で言い出します。

ドローンでも同じことが起きます。思った方向に飛ばない。もう一度やる。角度を変える。誰も正解を教えていない状態で、原因を推測して次の手を決めている。この数十秒が、私たちが場をつくっている理由そのものです。

AIに聞けば「厚みを持たせましょう」と答えは返ってきます。けれど、倒れた瞬間の「あっ」という感覚は渡せません。ここが、AIで代替できない部分だと考えています。

その時間に何が育っているのか

私たちは、体験を通じて育つものを4つに整理しています。抽象的に見えるかもしれませんが、現場では「止まっている時間」にこの4つが同時に動いています。

能力 中身
創造力 自分のアイデアを形にするため、形状や構造、色彩の組み合わせを考える
空間認識能力 物体を立体的に観察し、X・Y・Z軸の視点で考えながら構築する
論理的思考 どうすれば思い通りの形になるか、構成要素を考えながら組み立てる
自己探究力 自分の興味や好きなものを見つける機会になり、「自分の強み」を発見できる

探究の文脈に置き換えるなら、評価すべきは成果物の完成度ではなく、行き詰まった回数と、そこからの手の打ち方ではないかと考えています。AIが介在すると成果物は一様に整うので、完成度で見ると差が消えます。

45分で体験は成立するか

これはよく聞かれます。私たちの実感を正直に書きます。

時間 できること
45分(1コマ) 道具に触れて、1回作る。ただし「失敗してやり直す」までは届きにくい
90分(2コマ連続) 作る → 失敗する → 直す、が一周する。ここから手応えが変わる
複数回 前回の失敗を覚えている状態で始まる。子どもの立ち上がりが明確に速い

もし1コマしか取れないなら、説明を削って、触る時間に寄せるのが現実的だと考えています。私たちも段取りの説明を長くしすぎて、いちばん大事な時間を削ったことが何度もあります。

うまくいかなかったこと

  • 数百人規模のイベントで体験時間を1人10分に設定したところ、人気の体験は30〜60分待ちになりました。回転を優先した結果、じっくり試す時間のほうを削っていたことになります
  • 千葉での開催後の振り返りでは、スタッフから「最初にもっと自由に触ってもらう時間があってもよかった」という声が出ました。進行を整えるほど、子どもが自分で気づく余地は減ります
  • 保護者向けのトークセッションを組んだ回は、観客が最大5名でした。子どもが夢中な時間帯に大人だけを座らせる設計自体に無理がありました

現地とオンライン、どちらが向くか

私たちは提供の形を2つに分けています。現地に伺うのが出張、画面ごしに届けるのがオンラインです。

向いている場面
出張 実物の機材に触れさせたい。ドローン、レーザー彫刻など、その場でないと成立しない体験
オンライン 移動費がかからないぶん、遠い地域・小規模・高頻度に向く。3D・CG制作や生成AIなど、つくる工程がデジタルで完結するもの。物になる部分は郵送で解決します

「場所さえあればいい」のがオンラインの強みです。詳しくはオンラインの3D・CGコースと生成AIでデザインのページにまとめています。

使わせるか禁じるかの前に、決めておきたい3つ

校内でAIの扱いを議論するとき、「使わせる/禁じる」の二択で止まってしまうことがあります。現場から見ると、その手前に決めておいたほうがいいことが3つあります。

決めること なぜ先に決めるか
何のために使うか 「調べる」に使うのか「考えを整理する」に使うのか「作る」に使うのかで、必要な指導がまったく変わります。ひとまとめにすると議論が噛み合いません
出てきたものの扱い そのまま提出してよいのか、必ず自分の言葉に置き換えるのか。ここを曖昧にしたまま使わせると、子どもは判断を保留したまま使い続けます
不満を言う練習をするか 出てきた結果に「これじゃない」と言えるかどうかが、使う側と使われる側の分かれ目です。ここを授業に入れるかどうかは、意識的に決める価値があります

3つ目は見落とされがちですが、私たちが現場でいちばん差を感じているところです。生成AIで絵をつくる体験をしていると、出てきた絵をそのまま受け取って「すごい」で終わる子と、「もっと青くしたい」「この犬じゃない」と言い出す子に、はっきり分かれます。差を生んでいるのは操作の上手さではなく、頭のなかに先に像があるかどうかです。

正直に言うと、私たちが持っていないもの

学習効果を測る定量データを、私たちはまだ持っていません。来場者数や体験実施数は記録していますが、「参加後に子どもが自分で何かを作り続けたか」を追う仕組みは、これから作るところです。

ですので、エビデンスをお求めの場合、いまお渡しできるのは現場の観察と、うまくいかなかった記録のほうです。それでよければ、設計から一緒に考えられます。逆に、効果測定を含めた設計をご一緒できる学校があれば、こちらとしても大変ありがたい話です。

私たちについて

デジタルキッズクラブは、子どもが「使う側」ではなく「創る側」に立つ場をつくっている団体です。教室は持たず、学校・地域施設・商業施設に機材ごと出向く形と、画面ごしに届けるオンラインの形で活動しています。愛媛・東京・千葉・愛知で開催し、放課後等デイサービスやフリースクールとの連携実績もあります。

この記事を書いた人

デジタルキッズクラブ(運営:lanitech合同会社)/西脇 靖紘

デジタルキッズクラブ 代表。愛媛・東京・千葉・愛知で、子どもがデジタルの道具に直接手を伸ばす一日一日をつくっています。これまでに延べ1,000名以上の子どもと保護者に体験を届けてきました。愛知淑徳大学ではAI関連科目の非常勤講師も務めており、日々AI×教育と向き合っています。これら記事の内容は、私たちの現場での運営や観察にもとづいています。

授業・行事への出張を承っています

現地に機材ごと伺う出張と、画面ごしに届けるオンラインの2つの形があります。コマ数と人数をお聞かせいただければ、成立するかどうかから正直にお答えします。AI時代の学びをテーマにした教職員向けの講演・研修も承っています。校内研修の形で、現場の困りごとを先に伺ってから話します。

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