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情報の授業で生成AIをどう扱うか。3つの選択肢

情報の授業で生成AIをどう扱うか。3つの選択肢

「情報の授業で生成AIを扱ってください」と言われたとき、多くの先生がまず困るのは「使わせるのか、使わせないのか」を先に決めようとしてしまうことです。この二択で考えている限り、職員室の議論は止まります。実際には、授業で生成AIを扱う方法は大きく3つあり、どれを選ぶかで準備の量も、必要な端末環境も、評価の仕方もまったく変わります。この記事では、その3つを並べて比べられる形に整理します。

この記事の要点

  • 生成AIの授業は「使わせる/使わせない」ではなく、題材にする・道具にする・共同作業者にするの3択で考えると設計しやすくなります。
  • アカウント発行や年齢制限の壁があるので、最初の1回は「使わせない授業」でも成立します。むしろそのほうが議論が深くなることが多いです。
  • 国の指針(2026年9月時点)は使い方の例を示しますが、各校が何をどこまで認めるかは決めてくれません。校内ルールを先に1枚にしておくほうが早いです。
  • 私たちが外部講師として入るときも、最初から「AIを触らせる」構成にはしていません。うまくいかなかった例も含めて後半に書きます。

「使わせるか・使わせないか」で議論が止まる理由

生成AIの授業設計が進まない学校には、だいたい同じ構図があります。情報担当の先生は「触らせないと分からない」と考え、管理職や他教科の先生は「個人情報や著作権が心配だ」と考える。どちらも正しいので、決着がつきません。

ここで抜け落ちているのが、生成AIは「触らせる/触らせない」の2値ではないという点です。授業の中で生成AIが置かれる位置には、少なくとも3つの段階があります。子どもが画面に触れない授業もあれば、教員だけが操作して結果を見せる授業もあり、子どもが自分の作品づくりにAIを組み込む授業もある。この3つはまったく別の授業設計で、必要な準備も、起きるトラブルも違います。

順に見ていきます。

タブレットを操作する手元
デジタルの道具は「触れたかどうか」より「何を決める場面が来たか」で学びが変わります。

選択肢A:AIを「題材」にする(子どもは操作しない)

生成AIそのものを学習の対象として扱い、子どもは端末に触れない構成です。教員が用意した出力例を配る、あるいは教員が教室前方で1回だけ実演して、その出力を全員で検討します。

この形の強みは、アカウント発行も年齢確認も要らないことです。校内の承認が下りるまで何週間もかかる、というボトルネックを丸ごと飛ばせます。端末の不調で授業が崩れることもありません。

Aが向いている場面

導入の1時間。学年全体で足並みをそろえたいとき。ICT環境に差がある学校。校内ルールがまだ固まっていない段階。

実際にやると分かりますが、Aはけっして「手抜きの授業」ではありません。AIが書いた文章をひとつ配って「どこが正しくて、どこが確かめられないか」を線を引かせるだけで、45分は簡単に埋まります。むしろ、操作に気を取られない分だけ、子どもは中身の話をします。

選択肢B:AIを「道具」にする(限定的に使わせる)

用途と回数を限定して、子どもに操作させる形です。「調べ学習の入口を広げるためだけに3回まで」「作文の構成を相談するためだけに使い、本文は自分で書く」といった枠を先に決めます。

Bの肝は、使ってよい場面より、使ってはいけない場面を先に書くことです。「自由に使っていい」と言われた子どもは、たいてい最短距離で答えを取りに行きます。それ自体は責められませんが、そこからは授業になりません。

Bでいちばん多いつまずき

アカウント。学校で使える生成AIサービスは年齢や保護者同意の要件がサービスごとに違い、教育委員会が契約している環境でないと個人アカウントの利用が認められないことがあります。授業日の2か月前には、どの環境で動かすかを確定しておくのが現実的です。ここが遅れると、Aへの差し替えを当日朝に判断することになります。

選択肢C:AIを「共同作業者」にする(作る過程に入れる)

子どもが何かを作る過程に、生成AIを最初から組み込む形です。物語の挿絵を作る、アプリの画面案を出す、ポスターのラフを何案も出して選ぶ。私たちの出張ワークショップでいえば生成AIでデザインがこの形にあたります。

Cでいちばん起きることは、たぶん想像と逆です。子どもはAIの出力に感動しません。数回出力させると飽きて、「自分で直したい」と言い出します。この「思っていたのと違う」を経由して初めて、AIに対する指示が具体的になっていきます。

ただしCは、授業として一番重たい形です。端末が全員分いること、作品を保存する先があること、時間が最低でも2コマあること。45分1コマでCをやろうとすると、出力して終わりになります。

3つを1枚で比べる

比べる観点 A 題材にする B 道具にする C 共同作業者にする
子どもの操作 なし(教員が実演) 用途を限って操作 制作過程で自由に操作
必要な時間 1コマで成立 1〜2コマ 2コマ以上が現実的
アカウント 不要 必要(要事前確認) 必要(要事前確認)
端末環境 教員機のみ グループに1台でも可 1人1台が前提
主なつまずき 議論が浅く終わる 使いすぎ・丸写し 時間切れ・保存忘れ
評価のしやすさ やりやすい(記述で見る) ふつう(過程の記録が要る) 難しい(作品+過程の両方)
向く学年 小学校高学年〜中学校 中学校〜 中学校〜(小学校は補助が要る)

この表を職員会議に1枚持っていくだけで、話が「やるかやらないか」から「今年はどれでいくか」に変わります。決め方としては、端末とアカウントの確定時期から逆算するのがいちばん揉めません。

最初の1回をAかBから始めるほうがいい理由

いきなりCをやりたくなる気持ちは分かります。見栄えがしますし、公開授業でも映えます。それでも最初はAかBを勧めるのは、次の3つが理由です。

  1. 子どもの「AI観」がまだ揃っていない教室には、毎日使っている子と、名前しか知らない子が同時にいます。Cから入ると、前者が後者の作業を代行してしまい、体験の差がそのまま広がります。
  2. 教員側に「失敗の型」がたまっていないAIは、指示が曖昧なときに一番もっともらしく間違えます。その様子を教員が一度も見ていない状態で、40人が同時に触る場を運営するのは負担が大きすぎます。
  3. 保護者への説明を先に済ませられるAで一度やっておくと、学年だよりに「こういう扱い方をしています」と書けます。その実績があるとBやCの承認は通りやすくなります。

国の指針は「どこまで認めるか」を決めてくれない(2026年9月時点)

文部科学省は「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン」を公表しています。2026年9月時点で公表されている最新版は Ver.2.0(2024年12月26日付)で、2026年6月末の中央の会議で Ver.2.1 への改訂方針が示されています。改訂では、より新しい技術動向や、学習の過程を省略してしまうことへの対応が論点として挙がっています。

確認するときの注意

この分野は版が変わります。授業を組む前に、文部科学省のサイトで最新版の日付を必ず見てください。この記事の記述は2026年9月時点のものです。また、国のガイドラインは考え方と例を示すもので、「自校で何をどこまで認めるか」は各設置者・各校の判断になります。

つまり、国の文書を待っていても、校内の可否は決まりません。先に決めておくとよいのは、次の4点くらいです。

  • 使ってよい場面と、使ってはいけない場面(提出物の扱いを含む)
  • 入力してはいけない情報(氏名・写真・成績・家庭の事情)
  • 出力を提出物に使うときの書き方(どこをAIに頼ったか書かせるか)
  • 保護者への説明の文面と、説明するタイミング

評価をどうするか。「過程を残す」だけで足りる

BとCで必ず出てくるのが「AIを使った作品をどう評価するのか」という問いです。ここは複雑に考えないほうが続きます。

実務的には、出力そのものではなく、出力にどう手を入れたかを残させるだけで、評価できる材料はそろいます。具体的には、最初の指示文、返ってきた出力、そこから自分が変えた箇所と理由。この3点を1枚のシートに残させます。作品の完成度ではなく、判断の回数を見る、という切り替えです。

AIを使った作品で見たいのは、うまくできたかどうかではなく、何回「これは違う」と思えたかです。

ここまでのまとめを、授業の組み立て順に

1. 環境を確定する端末とアカウントがいつ使えるかを先に確かめる。ここが未定ならAで組む。
2. A/B/Cを選ぶ時間・端末・学年で決める。迷ったらA。公開授業でもAは十分に成立する。
3. 禁止事項を1枚にする入力してはいけない情報と、提出物での扱いを先に書く。子どもにも配る。
4. 残すものを決める指示文・出力・直した箇所。この3点が評価の材料になる。
5. 保護者に先に伝える実施後ではなく実施前。学年だより数行で十分。問い合わせが激減する。

私たちが外部講師として入るとき、最初からAIを触らせない

デジタルキッズクラブは教室を持たず、イベントと、学校や施設への出張/オンラインのワークショップで活動しています。愛媛・東京・千葉・愛知で開催してきました。生成AIを扱う回も年々増えていますが、導入の20分は、いまだに画面を開かせません。

最初にやるのは、「自分が作りたいものを、言葉だけで隣の人に説明する」という時間です。これをやっておかないと、あとでAIに向かって書く指示が「かっこいいの」で止まります。言葉にする難しさを先に体験した子どもは、AIの出力を見たときの反応がまったく違います。

現場で起きること

指示を出し直す回数が多い子ほど、最後に「これは自分が作った」と言います。逆に、一発でそれらしい出力が出てしまった子は、作品への愛着が薄いまま終わることが多い。うまくいきすぎた子をどう引き戻すかが、この授業のいちばん難しいところです。

うまくいかなかったこと

正直に書きます。私たちがこの数年で外した回には、いくつか共通点がありました。

  • 「AIってすごいでしょう」から入った回。子どもは冷めています。驚かせようとした瞬間に、こちらが答えを持っている人に見えてしまい、質問が出なくなりました。
  • 作る対象を決めずに触らせた回。「何でも作っていいよ」は、いちばん手が止まる指示でした。制約が少ないほど自由になる、というのは大人の思い込みでした。
  • 時間を45分しか取れなかったのにCで組んだ回。出力して眺めて終わり。作品として持ち帰るものが残らず、その日のうちに忘れられました。

この3つは、どれも「準備不足」ではなく「設計の選択ミス」です。だからこの記事の前半を、A/B/Cという形にしました。

向かないケース

生成AIを授業に入れないほうがいい場面もあります。DKCは教室を運営していないので、ここは率直に書けます。

CASE 01その単元の目的が「自分の言葉で書く」ことにある読書感想文や意見文など、言語化そのものが目的の単元にAIを入れると、目的と手段が衝突します。別の単元に回したほうが早いです。
CASE 02端末の持ち帰りルールがまだ定まっていない授業で使わせると、家でも使います。家庭での扱いが決まっていない段階で先に授業で解禁すると、保護者対応が先生個人に集中します。
CASE 03担当が一人しかいないBとCは、机間指導が2人いないと回りません。人手が足りない年は、Aで確実に1時間やりきるほうが次につながります。
CASE 04評価の方針が学年でそろっていない同じ学年の別クラスで扱いが違うと、子どもが一番先に気づきます。学年で1枚そろえてからのほうが、結果的に早く進みます。

当日、先生におねがいしていること

私たちが出張で入るときに、学校側にお願いしているのは3つだけです。特別な準備は要りません。

  • 子どもの端末が起動し、ネットにつながることを前日までに1回確認しておくこと
  • 「先生も答えを知らない」と最初に言ってもらうこと(これがあるかどうかで発言量が変わります)
  • 終わったあとの15分を、質問の時間として空けておくこと
スクリーンの前に集まった会場のようす
大人が答えを持っていないことを先に言うと、子どもの質問の量が変わります。

やらなくていいこと

最後に、やらなくていいことを書いておきます。相談を受けるとき、ここで力尽きている学校が多いからです。

  • サービスを比較して最良の1つを選ぶこと。どれも数か月で変わります。今ある環境で動くものを使えば十分です。
  • 先生が全部使いこなせるようになってから始めること。先に触れている子どもは必ずいます。教える側が詳しい必要はなく、止める判断ができれば授業は成立します。
  • 完璧な校内ルールを作ってから始めること。4項目の暫定版で1回やって、そのあと直すほうが、実態に合ったルールになります。

AI時代に何が正解かは、まだ誰も持っていません。私たちも持っていません。だからこそ、持っているふりをしない大人が教室にいることのほうが、扱い方のうまさよりずっと効きます。

よくある質問

Q. 子どもに触らせない授業でも「生成AIを扱った」と言えますか。

A. 言えます。生成AIの出力を材料にして、どこが確かめられるかを検討する授業は、情報活用能力の中心にある学習です。操作の有無で学習内容が決まるわけではありません。

Q. 何年生から扱えますか。

A. 出力を読んで検討する形(題材として扱う形)なら小学校高学年から成立します。子ども自身が操作する形は、利用するサービスの年齢要件と校内の方針に左右されるため、学年ではなく環境から逆算して決めるのが現実的です。

Q. 45分1コマしか取れません。どの形にすべきですか。

A. 題材として扱う形をおすすめします。制作過程にAIを組み込む形を1コマでやると、出力して眺めるだけで終わり、持ち帰るものが残らないことが多いです。

Q. AIを使った提出物はどう評価すればよいですか。

A. 完成物だけを見ると判断できません。最初の指示文、返ってきた出力、自分が変えた箇所と理由の3点を残させ、判断の過程を評価の材料にする方法が実務的です。

Q. 外部講師に頼むと、学校側の準備は増えますか。

A. 機材は持ち込みます。学校側にお願いしているのは、端末とネットワークの事前確認、授業のはじめに「先生も答えを知らない」と伝えてもらうこと、終了後に質問の時間を確保することの3点です。

この記事を書いた人

デジタルキッズクラブ(運営:lanitech合同会社)/西脇 靖紘

デジタルキッズクラブ 代表。愛媛・東京・千葉・愛知で、子どもがデジタルの道具に直接手を伸ばす一日一日をつくっています。これまでに延べ1,000名以上の子どもと保護者に体験を届けてきました。愛知淑徳大学ではAI関連科目の非常勤講師も務めており、日々AI×教育と向き合っています。これら記事の内容は、私たちの現場での運営や観察にもとづいています。

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機材はこちらで持ち込みます。1コマの導入から、2コマの制作まで、時間と学年に合わせて構成をつくります。オンラインでの実施にも対応しています。

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