
「授業でドローンを飛ばしたい」という相談を受けたとき、最初に聞かれるのはたいてい免許のことです。ところが実際には、免許の話にたどりつく前に決まってしまう論点があります。屋内でやるのか、屋外でやるのかです。ここが決まると、必要な手続きの量が大きく変わります。
この記事では、学校の校内でドローンを飛ばす場合に確認しておきたいことを5つに整理します。私たちは体育館や施設に機材を持ち込んで子どもに操縦してもらう側なので、書けるのは「呼ばれる側から見た現実的な段取り」です。制度の詳細は所管の一次情報にあたる必要がありますが、まず何を調べればいいかの地図としてお使いください。
なお制度の記述は2026年9月時点で国土交通省の公開情報を確認したものです。運用は変わりうるので、実施が近づいたら必ず最新の情報をご確認ください。
結論:確認は5つ、順番も決まっている
順番に意味があります。上から順に潰していくと、途中でやめる判断も早く出せます。
| 確認すること | ここで決まること | |
|---|---|---|
| 1 | 屋内でやるか、屋外でやるか | 航空法の手続きが要るかどうか |
| 2 | 機体の重さと登録の要否 | 機体の準備にかかる時間 |
| 3 | 操縦する人の資格の扱い | 誰が飛ばすか |
| 4 | 校内の同意と保険 | 実施できるかどうか |
| 5 | 会場の条件(床・広さ・電源) | 何人がどれだけ体験できるか |
1. 屋内か屋外かで、必要な手続きが変わる
航空法の無人航空機の飛行ルールは、屋外の飛行を対象にしています。四方と天井が囲まれた屋内は、この飛行ルールの対象外という扱いです。体育館や多目的室で飛ばす場合は、ここが大きく効きます。
屋外、たとえば校庭で飛ばす場合は話が変わります。飛行が原則禁止されている空域として、人口集中地区(DID)の上空、空港等の周辺、地表から150m以上の高さが定められています。学校の所在地が人口集中地区に入っていれば、それだけで許可の申請が必要になります。自校がDIDに含まれるかは、国土地理院の地図で確認できます。
さらに、飛ばし方そのものにもルールがあります。夜間の飛行、目視の届かない飛行、人や物件から30mの距離が取れない飛行、催し場所の上空での飛行などは「特定飛行」にあたり、原則として許可や承認が要ります。児童が周りにいる状態で飛ばすと、30mの距離はまず確保できません。屋外でやるなら、この一点だけでも申請が前提になると考えておいたほうが安全です。
私たちが学校や施設で実施する場合、ほぼ屋内を選んでいます。手続きの軽さもありますが、風がなく、落下しても被害が小さく、待っている子の動線を管理しやすいためです。
2. 100gと機体登録
航空法で無人航空機として扱われるのは、機体本体とバッテリーの重量が100g以上のものです。100g未満のものは無人航空機の飛行ルールの対象外になりますが、対象外だから何でもよいという意味ではありません。空港周辺や高い高度についてはまた別の規制がかかりますし、自治体の条例で公園などの飛行を禁じている場合もあります。
100g以上の機体を屋外で飛ばすなら、機体の登録を済ませて登録記号の発行を受けておく必要があります。許可・承認の手続きを進めるうえでも、登録が済んでいることが前提になります。登録には日数がかかるので、実施日の直前に思い出しても間に合いません。学校で機材を購入して自前でやる予定なら、ここは購入と同時に着手してください。
体験用の小型機は100gを下回るものが多く、私たちが授業や体験で使っているものもこの範囲に入ります。屋内で、小型機で、というのが最も段取りの軽い組み合わせになります。
3. 免許は要るのか
ここが最も誤解の多いところです。国家資格の技能証明は、飛ばすために必ず要るものではありません。技能証明と機体認証を取得している場合に、一部の飛行許可・承認の手続きが不要になることがある、という位置づけです。つまり資格は「手続きを軽くする道具」であって、「持っていないと飛ばせない免許」ではありません。
| やりたいこと | 技能証明 | 実務上の要点 |
|---|---|---|
| 体育館など屋内で小型機を飛ばす | 不要 | 航空法の飛行ルールの対象外。校内ルールと安全管理が主 |
| 校庭で100g以上を飛ばす(DID外・日中・目視内) | 不要 | 機体登録は必要。飛ばし方のルールを守る |
| 校庭で児童の近くを飛ばす/DID内で飛ばす | 不要だがあると手続きが軽い | 特定飛行にあたり許可・承認の申請が前提 |
| 行事で観客の上空を飛ばす・空撮する | 実質は専門業者へ | 催し場所上空の扱いになる。学校単独では負担が大きい |
整理すると、授業でやりたいことと行事で空撮したいことは、必要な体制がまったく違います。前者は校内で完結できる範囲がありますが、後者は専門の業者に頼むのが現実的です。相談の初期に、このどちらなのかを言葉にしておくと話が早く進みます。
4. 校内の同意と保険
法令と別に、校内の合意形成があります。実施の可否を実際に左右するのはこちらであることが多いです。
確認しておきたいのは、管理職の了解、施設管理者(体育館の使用主体が学校でない場合)の了解、保護者への事前案内、そして万一の物損に備える保険の扱いです。ドローンは落ちます。落ちても大事にならない設計にしておくことと、落ちたときの費用負担を先に決めておくことは別の話です。
外部に依頼する場合は、事業者側の賠償保険の加入状況を聞いてください。私たちも含め、この質問に即答できない相手には任せないほうがいいと考えています。
5. 会場の条件は、思ったより少ない
設備の要求は軽いほうです。私たちが体育館で実施するときに用意しているものは、実質これだけです。
- 1レーンあたり数メートル四方の広さ。2〜3レーンを並べる
- 床に敷くマット。落下時の破損を防ぐためのもので、これがあるかどうかで機体の生存率が変わります
- 電源(端末とバッテリーの充電用)
- 操縦する子が座る椅子
通信環境は必須ではありません。私たちが使っている機体は端末と直接つながるため、校内Wi-Fiがなくても成立します。学校のネットワークに機材をつなぐ手続きが要らないのは、実務上かなり大きい利点です。
安全面では、機体側の設定で高さの上限を2mにかけています。設定で縛ってしまえば、注意喚起の言葉を増やさずに済みます。
45分のどこに置くか
1コマに収める場合の組み立ての目安です。飛ばす時間は思っているより短くて足ります。
| 時間 | やること |
|---|---|
| 5分 | 安全のルール。高さの上限、人に向けない、この2つだけ |
| 5分 | 操縦の説明。細かい機能は説明しない |
| 25分 | 交代で操縦。1人あたり5分程度。待つ子には別の役割を渡す |
| 10分 | 思いどおりにいかなかった場面の共有。ここが授業の中身 |
1人あたりの時間を長く取りたくなりますが、私たちの現場では5分程度が適切という結論になっています。10分にすると、飛ばしている子の集中は続くものの、待っている子の列が伸びて全体の体験時間が減ります。
うまくいかなかったこと
失敗も書いておきます。以前、自由に飛ばしてよいという設計にしたことがあります。結果、機体があちこちで落ちて壊れ、その修理のあいだ列が止まりました。次の回から離陸 → 輪をくぐる → 着陸の3ステップだけに絞ったところ、落下が減り、進行も安定しました。制限したほうが体験の質は上がるという、直感に反する結果です。
もう一つは充電管理です。バッテリーは1本で10分強しかもちません。充電には1時間かかります。ここを甘く見ると、授業の後半で飛ばせる機体がゼロになります。私たちは充電済みと空を物理的に分けて置く運用にしていますが、この段取りを誰が担当するかを決めておかないと、当日必ず混乱します。
自校でやるか、呼ぶか
ここまで読んで「屋内で小型機なら自校でもできそうだ」と思われたなら、その判断は妥当です。機体と、マットと、担当を決める人がいれば成立します。無理に外部に頼む必要はありません。
外部に頼む価値があるのは、機体の台数が要る場合と、1コマで学年全体を回したい場合です。私たちデジタルキッズクラブは愛媛・東京・千葉・愛知で、子どもがデジタルの道具に直接手を伸ばす一日をつくっており、出張ワークショップとしてドローンのほか3Dプリンターや生成AIの体験も持ち込んでいます。機材の台数と当日の運営体制を丸ごと引き受ける形です。
ドローンのように機材の持ち込みが前提になるものは、オンラインでは代替できません。逆に、生成AIやデジタル制作の授業であればオンラインの出前授業で成立します。どちらが向くかは扱う道具で決まるので、そこも含めてご相談ください。
最後にもう一度だけ。制度の記述は2026年9月時点のものです。実施日が決まったら、国土交通省の無人航空機のページで最新の飛行ルールを確認してください。
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