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自治体の子ども向けDXイベント事例、探せる場所4つと読み方

自治体の子ども向けDXイベント事例、探せる場所4つと読み方

子ども向けのデジタル体験イベントを庁内で提案しようとして、まず「他の自治体の事例」を探し始めた方が多いと思います。ところが検索してみると、出てくるのは事業者のサービス紹介か、当日の写真が数枚並んだ報告記事ばかりで、決裁を通すために必要な情報がほとんど載っていません。

先に結論を書きます。事例が集まっている場所は4つに絞れます。そして、その4つのどれを見ても「何人来たか」は分かりますが、「どうやって人を集めたか」と「誰が当日何人で回したか」は、ほぼ書かれていません。この2つが抜けたまま企画書を書くと、当日になって足りないものが出てきます。

私たちは県の事業の一部として複数会場で子ども向けのデジタル体験イベントを運営し、寺院や商業施設でも同じことをやってきました。事例を「探す側」ではなく「事例として書かれる側」から、どこを見ればいいのかを書きます。

「こどもDX」という言葉が、二つの意味で使われている

検索する前に、言葉の整理が要ります。いま「こどもDX」と言うとき、実務ではまったく別の二つを指しています。

ひとつは子育て行政手続きのデジタル化です。保育所の入所申請、母子保健のデータ連携、児童手当の電子申請といった、自治体の内部システムの話。業界団体もこちらの意味で使っています。

もうひとつが子ども自身がデジタルの道具に触れる体験事業です。3Dプリンターやドローン、生成AIを子どもが実際に触る一日をつくる、という話。この記事で扱うのは後者です。

検索窓に「こどもDX 事例」と入れると前者ばかりが返ってくるのは、この二重使用が原因です。後者を探すなら、キーワードを「子ども デジタル体験 イベント 自治体」「デジタル人材育成 子ども 事業」のように変えたほうが早く着きます。

事例が集まっている場所は、大きく4つ

網羅性より、決裁に使えるかどうかで並べます。

探す場所 載っていること 使いどころ
交付金・補助金の採択事例集 事業名、実施主体、金額の規模、目的 予算の桁と、事業の建て付けを掴む
都道府県のDX推進事業の報告書 参加者数、アンケート結果、実施内容 数字の根拠として引用できる
実施した市町村の広報・議会資料 庁内のどの課が持ったか、後援の付き方 自分の庁内で誰に話すかが分かる
運営した事業者の記録 当日の運営体制、失敗、改善 いちばん実務に効くが、数が少ない

上の3つは公開されているぶん探しやすいのですが、成功として書かれた文書なので、うまくいかなかった部分が削られています。4つ目だけが運営の実態に近く、しかし公開している事業者がほとんどいません。だから提案資料をつくる人が、当日の設計で毎回つまずきます。

事例集で分かることと、分からないこと

採択事例集や報告書を10本読んでも、次の3つはまず出てきません。

1. 集客の内訳。 「◯◯名が参加」とは書かれても、その人たちがどこで開催を知ったのかは書かれません。ここが分からないと、自分の地域で同じ人数が来る保証がありません。

2. 当日の人の張り付き方。 体験ブースひとつに何人のスタッフが必要か。受付、誘導、機材の整備をそれぞれ誰が持つのか。ここを見積もらずに会場を押さえると、当日に人が足りません。

3. 断った依頼と、閉じた企画。 準備の途中で消えたメニューには、必ず理由があります。それが書かれた事例集を私は見たことがありません。

私たちが複数会場を回して分かったこと

県の地域DX実践支援の事業の一環として、県内の3つの会場で子ども向けのデジタル体験イベントを実施しました。3会場とも規模は同程度で、内容もほぼ同じ構成にしています。にもかかわらず、会場ごとに「どこで知ったか」がまるで違いました。

都市部の会場では、SNS広告経由が半数を超えました。一方、郡部の会場では小学校で配ったチラシが認知経路の6割以上を占めています。同じ内容、同じ告知予算でも、届く経路が地域によって逆転する。これは3回やらないと分かりませんでした。

自治体の担当者にとって、この差は現実的な意味を持ちます。学校でのチラシ配布は、後援名義とセットで頼めることが多く、現金の支出をほとんど伴いません。広告費を積む前に、まずここが使えるかを確認したほうが費用対効果は高くなります。ラジオCMも3会場で計130本の20秒スポットを流しましたが、それ単独より、配布物と組み合わせたときのほうが効いていました。

告知経路は、事例の写真より先に確認する

事例を読むとき、つい当日の写真の華やかさを見てしまいます。ただ、企画書に落とすときに効くのは写真ではなく、その手前の告知設計です。

確認する順番としては、①どの経路で告知したか ②開催の何日前から動いたか ③申込は先着か抽選か、の3点を先に潰します。この3つが読み取れない事例は、そのまま真似しても再現しません。読み取れないと分かった時点で、その事例は「規模感の参考」に格下げして、深追いしないほうが時間を使わずに済みます。

うまくいかなかったこと

私たち自身の失敗も書いておきます。ある会場で、体験メニューの機材を必要台数そろえないまま当日を迎えました。結果として途中で受付を止めることになり、来ていただいた方にお詫びをすることになりました。想定を超える来場があったこと自体は良いことですが、「回転できる台数」を先に決めていなかったのが原因です。

もうひとつ。ひとつの部屋に複数の体験を詰め込んだ会場では、導線の管理が追いつかず、長い待ち列がそのまま別の体験の通路をふさぎました。これも事例集には決して載らない類の失敗です。

だから、事例を探している段階の方にお伝えしたいのは、先に決めるべきは「何をやるか」ではなく「一日に何人受け入れるか」だということです。受け入れ人数が決まれば、必要な機材数も、スタッフ数も、会場の広さも自動的に決まります。逆順でやると、必ずどこかが足りません。

この体験は向かない、というケース

正直に書きます。次のような場合、子ども向けデジタル体験イベントは向きません。

単年度の予算消化が主目的で、翌年度以降の見通しがまったくない場合。一日だけ実施しても、子どもの側には「面白かった」以上のものが残りにくく、地域には何も蓄積しません。それなら、既存の行事の一部に小さく組み込むほうが続きます。

もうひとつは、成果指標を来場者数だけに置いている場合です。来場者数を最大化する設計と、一人あたりの体験の密度を上げる設計は、真正面からぶつかります。どちらを取るかを決めずに始めると、当日にその矛盾が待ち列という形で出てきます。

事例を自分の企画書に落とす順番

最後に、実務の順番だけ整理します。①「こどもDX」の二つの意味を切り分けて検索する ②交付金の採択事例集で予算の桁を掴む ③実施した自治体の広報・議会資料で庁内の持ち方を確認する ④運営事業者に告知経路と当日の体制を直接聞く。

④まで来ると、事例は資料ではなく相談相手に変わります。実際に手を動かしている事業者は、失敗も含めて話せることが多いはずです。私たちが実施している出張ワークショップや、会場の制約が大きい場合のオンライン実施についても、必要であれば具体的な体制の組み方からお話しします。

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この記事を書いた人

デジタルキッズクラブ(運営:lanitech合同会社)/西脇 靖紘

デジタルキッズクラブ 代表。愛媛・東京・千葉・愛知で、子どもがデジタルの道具に直接手を伸ばす一日一日をつくっています。これまでに延べ1,000名以上の子どもと保護者に体験を届けてきました。愛知淑徳大学ではAI関連科目の非常勤講師も務めており、日々AI×教育と向き合っています。これら記事の内容は、私たちの現場での運営や観察にもとづいています。

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