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子どもがデジタルに夢中になるのは、なぜ日常の場所のほうなのか

子どもがデジタルに夢中になるのは、なぜ日常の場所のほうなのか

子ども向けのデジタル体験を、施設や地域の行事に取り入れたい。そう考えたとき、多くの場合「専用のスペースが必要では」という話から始まります。

私たちは、その専用スペースを実際につくって、やめました。そして今は、お寺や商業施設の一角、公共施設の会議室といった普段は別の用途に使われている場所で開いています。そちらのほうが、子どもが夢中になるからです。

この記事では、なぜそうなるのかを、うまくいかなかった話も含めて書きます。

常設スペースをつくって、やめた話

2023年11月、今治の商業施設のなかに、無料で入れる常設の拠点を開きました。ドローン、3Dプリンター、電子楽器、3Dペンを常時置き、週4〜5日、平日は15時から19時まで開けていました。子どもが放課後にふらっと立ち寄れる場所を目指していました。

結果は、来館が1日あたり0〜7組で張り付きました。2024年5月末で営業を終えています。

設備が悪かったわけでも、子どもが来なかった理由が立地だけだったわけでもないと考えています。いちばんの原因は単純でした。いつでも行ける場所は、今日行く理由にならない。

お寺で3Dプリンターを動かした日

2026年1月、名古屋の本願寺名古屋別院で一日のイベントを開きました。境内と本堂まわりに体験ブースを並べ、ドローンを飛ばし、3Dプリンターを動かし、生成AIで絵をつくりました。来場は約415名(子ども177名・大人238名)です。

正直、企画を持ちかけた時点では不安がありました。お寺とデジタルは相性が悪いのではないか、と。実際には逆でした。

  • 非日常が二重になる。普段入らない場所で、普段触らない道具に触る。子どもの構えが最初から違いました
  • 大人が一緒に来る理由になる。「子どもの習い事の見学」ではなく「家族で行く場所」として成立します。実際、来場の半分以上が大人でした
  • 地域の行事として受け止められる。施設単独のイベントではなく、その土地の一日として認識されます

これは、お寺だから成立したという話に限りません。すでに人が集まっている場所には、集客の理由がもともと備わっています。商業施設も、公共施設も、同じ性質を持っています。

「体験」と「アトラクション」の境目

ここは正直に書きます。約415名が来た日、来場者の多くはこのイベントをアトラクションとして受け取りました。並んで、乗って、楽しんで、帰る。

これは失敗というより、入口を広く開けた必然だと総括しています。ただし、施設側で企画される場合、この線引きは先に決めておいたほうがいいと思っています。

アトラクション型 体験型
1人あたりの時間 5分前後・高回転 60〜90分・少人数
目的 全員が必ず1回できること 作って、失敗して、直すまで届くこと
予約 不要・当日並ぶ 事前予約・抽選
施設側のメリット 滞在人数と回遊が増える 「ここでしかできない」記憶が残る

集客が主目的なら前者で構いません。ただし両方を同じ枠でやろうとすると、必ず事故ります。私たちがそれをやりました。

うまくいかなかったこと

その日に起きたことを、そのまま書きます。

  • 同じチケットなのに、体験できた量に差が出ました。来場が体験できる数を超え、14時以降に来た方は有料体験がほぼ終わっていました
  • 人気の体験は常時30〜60分待ち。1人10分の設定にしていましたが、現場の実感では5分が適切でした
  • 3Dペンが想定より早く故障し、ドローンは充電が足りませんでした。予備機を用意していませんでした
  • 大人向けのトークセッションは観客が最大5名。子どもが夢中な時間帯に、保護者だけを座らせる設計に無理がありました
  • 冬の開催だったため、15時半を過ぎると屋外の人出が急に減りました。出店者と会場側からは、暖かい時期の開催を要望されています

ここから学んだことは一つです。「何人来るか」ではなく「何人にきちんと体験させられるか」から決める。受け入れられる数を先に固定して、そこから集客の上限を決めます。

場所に必要な条件は、意外と少ない

よく聞かれるので、実務的なところを書いておきます。

要るもの 目安
電源 機材が多いほど必要。3Dプリンターやレーザー加工機を置く場合は事前に確認します
机と椅子 体験ブースの数だけ。会議室の長机で足ります
動線 行列ができる前提の幅。体験そのものより、動線が崩れたときの被害が大きい
屋内であること 冬季の屋外は人出が読めません。実際にそれで15時半以降が急減しました

専用の内装も、常設の設備も不要です。機材は私たちが持ち込みます。ドローン、3Dプリンター、レーザー加工機、3Dペン、電子楽器、iPad。愛媛から名古屋へ移送して運用しているので、移動を前提に組んであります。

滞在時間について、正直なところ

施設の方からいちばんよく聞かれるのが滞在時間です。ここは正直に書きます。私たちは滞在時間を計測していません。数字でお答えできる段階にありません。

その上で、現場で見ている傾向をお伝えします。

  • 行列ができる体験があると、待っている間に家族が周辺を回ります。結果として滞在は延びますが、待たせすぎると子どもの集中は先に切れます。私たちは1人10分の設定にして30〜60分待ちを作ってしまい、これは失敗でした
  • 短時間・高回転の体験を複数並べると、子どもは1つ終えるごとに次を探して動きます。回遊という意味ではこちらのほうが素直です
  • 作り込む体験は、その子と保護者を長く留めますが、人数は絞られます。滞在の総量より「記憶に残る密度」を取りに行く設計です

施設側の目的が回遊なら前者、地域での定着なら後者が向きます。ここを最初にお聞きできると、体験の組み合わせを外しません。

規模は、フェスでなくても構いません

数百人規模の一日だけが選択肢ではありません。むしろ最初は小さいほうがうまくいきます。私たちは今治で、地域の企業と共同で、ドローン・3Dプリンター・プログラミングの子ども向けワークショップを継続運営しています。こちらは月次の小さな形です。

体験の中身は1つずつ公開しています。3Dペンのように短時間・高回転で回せるものから、ドローン操縦のようにじっくり時間を取るものまであります。施設の広さと滞在時間に合わせて組み替えられます。

私たちについて

デジタルキッズクラブは、子どもが「使う側」ではなく「創る側」に立つ日をつくっている団体です。運営は lanitech合同会社。教室を持たず、地域の場所を借りて開催しています。

活動の目的は一つで、地域の子どもが、エンジニアやIT・AIの仕事を進路として選べるようにすることです。地域にそういう大人が少なければ、子どもはその職業を選択肢に入れません。だから、子どもが集まる場所のほうに機材ごと出ていく形をとっています。

場所を貸していただけるだけでも、一日は成立します。

この記事を書いた人

デジタルキッズクラブ(運営:lanitech合同会社)/西脇 靖紘

デジタルキッズクラブ 代表。愛媛・東京・千葉・愛知で、子どもがデジタルの道具に直接手を伸ばす一日一日をつくっています。これまでに延べ1,000名以上の子どもと保護者に体験を届けてきました。愛知淑徳大学ではAI関連科目の非常勤講師も務めており、日々AI×教育と向き合っています。これら記事の内容は、私たちの現場での運営や観察にもとづいています。

施設での開催のご相談を承っています

専用の内装も常設の設備も不要です。電源と机と動線があれば成立します。施設の広さと滞在時間に合わせて、体験の組み合わせをご提案します。

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