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放課後等デイのデジタル体験で配慮したこと|崩れる3か所と対策

放課後等デイのデジタル体験で配慮したこと|崩れる3か所と対策

放課後等デイサービスや特別支援の現場で、デジタル体験を入れてみたいという話をよくいただきます。同時に、必ずセットで出てくるのが「うちの子たちで成立するのか」という不安です。順番待ちが苦手な子がいる。音に敏感な子がいる。1人だけ最後まで終わらない可能性がある。

先に言うと、成立します。ただし、一般向けにやっているプログラムをそのまま持ち込むと、かなりの確率で崩れます。崩れる場所はだいたい決まっていて、内容の難しさではなく待ち時間・音・終わり方の3か所です。

私たちは教室を持たず、イベントと出張・オンラインで子どもとデジタル機材を触っています。かつて運営していた常設の拠点も含めて、支援が必要な子と一緒にやってきた範囲で、何を変えたか、何がうまくいかなかったかを書きます。専門家の立場ではありません。現場で見たことだけを書きます。

持ち込む前に、いちばん効いた設計変更

結論から書きます。プログラムの中身を簡単にするより、体験の枠を狭くするほうが効きました。

例えばドローンです。一般向けのイベントでは「自由に飛ばしてみよう」から始めることがありますが、これを支援が必要な子の場に持ち込むと、何をすればいいか分からない時間が生まれます。私たちは工程を3つだけに固定しました。離陸する、輪をくぐる、着陸する。それ以上でも以下でもありません。

枠を狭くすると、できたかどうかが本人にも分かります。自由度が高いほど良い体験になるとは限らない、というのはこの仕事をしていていちばん覚えたことのひとつです。

待ち時間が、いちばん先に事故になる

私たちが過去のイベントで最大の課題として振り返りに書き残しているのが、待ち時間です。人気のブースに列ができ、待っている間に集中が切れ、順番が来たときにはもう気持ちが離れている。これは一般向けの場でも起きますが、支援が必要な子の場では、より早く、より強く出ます。

対策は2つに集約されました。

1つは、1人あたりの体験時間を短くすること。長くやらせたほうが親切だと思いがちですが、実際には10分は長すぎて、5分前後のほうが最後まで集中が持つケースが多かった。短くしたぶん、もう一度並べるようにするほうが満足度は上がります。

もう1つは、並ばずに参加できる体験を1つ混ぜること。私たちはARを使った回遊型のプログラムを入れています。順番を待つ必要がなく、いつ来ても、いつ抜けてもいい。列に並べない子の逃げ場になりますし、待っている子の時間つぶしにもなります。

音・光・においで止まる子がいる

機材は音を出します。ドローンのプロペラ音、3Dプリンターの駆動音、レーザー彫刻機の排気音。それから、材料を焼くにおい。これらは事前の説明資料には出てこないのに、当日いちばん最初に子どもを止める要素です。

やっておくとよいのは、開始前に音が出る機材を1回だけ鳴らして見せることです。「これから、こういう音がします」と先に予告しておくと、驚いて離脱する子がかなり減ります。それでも無理な子には、別室から見学できる場所を作っておく。無理に輪に入れないのが結果的にいちばん早い。

レーザー彫刻のように材料を焼く機材は、換気の確保も必要です。会場の条件によっては、そもそもメニューから外す判断をしています。

「終わったものを持って帰れるか」で、事後の落差が変わる

体験の当日より難しいのが、終わったあとです。楽しかったものが終わる、という切り替えが苦手な子は少なくありません。

ここで効いたのが、形が残るメニューを選ぶことでした。3Dペンで作ったもの、レーザー彫刻した竹のキーホルダー。手元に物が残っていると、「終わり」ではなく「持ち帰り」に変わります。実際、作ったものを人にあげた、という話は保護者の方からよくいただきます。

逆に、画面の中で完結して何も残らないメニューは、終わり方の設計を別に用意しないと、当日の最後がいちばん荒れます。

メニューごとの向き・不向き

これまでに実施した範囲での整理です。施設の条件と子どもの様子によって変わるので、あくまで出発点として見てください。

メニュー 1人あたり 音・刺激 形が残る 向いている場面
3Dペン 15〜20分 小さい 残る 未就学から。いちばん入口が広い
ドローン操縦 5〜10分 プロペラ音あり 残らない 体を動かしたい子。工程を3つに固定
レーザー彫刻 10〜15分 排気音・におい 残る 待つのが苦手な子。加工が一瞬で終わる
生成AIでつくる 10〜15分 小さい データで残る 文字入力ができる学年から
AR回遊型 自由 小さい 残らない 列に並べない子。滞在の受け皿

うまくいかなかったこと

正直に書きます。私たちがいちばん失敗したのは、機材の台数を読み違えたことです。

ある大規模な開催で、3Dペンの台数を十分に確保しないまま当日を迎えました。結果として体験を途中で締め切ることになり、参加できなかった方からのご指摘につながりました。内容の質ではなく、単純に台数と回転の設計ミスです。

特に支援が必要な子の場では、この失敗の影響がより大きくなります。「できると聞いていたのにできなかった」は、その日一日を壊してしまうことがあるからです。以降、私たちは参加する全員が最低1回はできる台数を先に確保してから開催日を決める、という順番に変えました。

もうひとつの失敗は、複数の体験を同じ部屋でやったことです。導線が交差し、スタッフの負荷が跳ね上がり、整理が追いつきませんでした。部屋を分けられないなら、メニューを減らす。これも机上では分からず、当日に思い知ったことです。

この形が向かないケース

すべての施設に勧められるものではありません。次のような場合は、無理に入れないほうがいいと考えています。

電源と机が確保できない場合。 機材はほぼすべて電源を必要とします。延長コードで足りる範囲を超えるなら、会場を変えるほうが早い。

職員が当日ほかの業務と兼務になる場合。 私たち側で機材は運びますが、その子の様子を分かっている人が最低1人、体験に張りついてくださるかどうかで結果が大きく変わります。ここが確保できない日程は、ずらしたほうがいいです。

「効果」を数字で出す必要がある場合。 1日の体験で測れるものは限られています。私たちが自信を持って言えるのは、その日に手が動いたかどうかまでです。それ以上を約束する立場にありません。

私たちが体験を届けている形

デジタルキッズクラブは、lanitech合同会社が運営しています。愛媛・東京・千葉・愛知でイベントを開き、そのほかに学校・施設への出張と、オンラインでのワークショップをやっています。

やっている理由は単純で、地域にITで活躍する大人が少なく、子どもが技術の仕事を進路として選びにくいからです。手本がいない状態を、体験で少しだけ埋めようとしています。答えを教える場ではなく、手を動かして考える場をつくることだけを一貫してやってきました。

かつて運営していた常設の拠点では、こんな声をいただいたことがあります。

「慣れない場所や人に馴染むのに時間がかかるのですが、珍しくまた行きたいと言う場所です。学校では出来ない経験が良い刺激になっているようでありがたいです。」

いまの出張・イベント中心の形は「点」なので、この声が拾えていた「線」の価値には届いていません。それは自覚しています。そのうえで、点にしかできないことがあるとも思っています。

実施メニューは 出張ワークショップの一覧 にまとめてあります。会場の条件が厳しい場合は、オンラインでの実施 という形も取れます。

まとめ

支援が必要な子とのデジタル体験は、内容を易しくするより、工程を狭くし、待ち時間を削り、終わり方を設計するほうが効きます。音が出る機材は先に鳴らして見せる。形が残るメニューを選ぶ。台数は参加人数から逆算して先に決める。

そして、当日その子を分かっている職員の方が1人張りついてくださること。これがいちばん大きな変数です。私たちが機材を運んでも、その部分だけは代われません。

授業・行事への出張を承っています

施設の広さ・電源・人数をお伝えいただければ、その条件で成立するメニューと所要時間をお返しします。オンラインでの実施もできます。

出張・オンラインの相談をする

すでにご検討中の方は こちらから直接ご相談ください。

この記事を書いた人

デジタルキッズクラブ(運営:lanitech合同会社)/西脇 靖紘

デジタルキッズクラブ 代表。愛媛・東京・千葉・愛知で、子どもがデジタルの道具に直接手を伸ばす一日一日をつくっています。これまでに延べ1,000名以上の子どもと保護者に体験を届けてきました。愛知淑徳大学ではAI関連科目の非常勤講師も務めており、日々AI×教育と向き合っています。これら記事の内容は、私たちの現場での運営や観察にもとづいています。

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