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子ども向けイベントのアンケート設計|報告に使える5つの設問

子ども向けイベントのアンケート設計|報告に使える5つの設問

イベントが終わり、集まったアンケートを前にして、報告書に何を書けばいいか分からない。満足度は高いけれど、それ以上のことが読み取れない。多くの場合、原因は当日の運営ではなく、設問を決めた時点にあります。

この記事の要点

  • 設問は子ども用3問・保護者用5問まで。増やすほど回収率も精度も落ちる
  • 満足度は毎回高く出るので、翌年と比較できる指標にならない
  • 行動に近い設問(初めて触ったもの、もう一度やりたいか)に替える
  • 設問は企画の段階で決める。終わってから考えると、報告に使える数字が残らない

当日アンケートは、来場者の感想を集めるための紙ではありません。次の一回をやるかどうかを、自分以外の人が判断するための材料です。判断するのは、上司であり、議会であり、協賛の担当者であり、翌年に異動してくる後任です。その人たちが読んで動けるかどうかで、設問を決めます。

この記事では、私たちが実際に使っている設問の組み方と、やってみて外した部分をまとめます。

スクリーンを前にした子ども向けイベントの会場の様子
その日の空気は写真に残りますが、翌年の予算を通すのは紙に残った数字のほうです。

なぜ満足度を聞いても報告に使えないのか

子ども向けのイベントで満足度を5段階で聞くと、ほとんどの回で4と5に集中します。楽しい場に来て、その場で紙を渡されて、低い点を付ける人は多くありません。結果として、毎年ほぼ同じ数字が並び、良くなったのか悪くなったのかが分からなくなります。

報告に効くのは、答える側が自分の感情ではなく、自分の行動や事実を答える設問です。何に触ったか、また来たいか、どこから来たか。これらは年による差が出ますし、答える側も迷いません。

満足度は「良かったか」を聞いている。報告に必要なのは「何が起きたか」のほう。

報告に使える5つの設問

以下の5つが、私たちが毎回入れている設問です。順番にも意味があります。答えやすいものから並べ、自由記述を最後に置きます。

設問1|初めて触った道具はどれか

当日の体験メニューを並べて、初めて触ったものに○を付けてもらいます。複数選択です。これだけで、イベントが「体験の入口」として機能したかが数で出ます。

この設問が強い理由

すでに知っている子が来ているのか、初めての子に届いているのかが分かります。広報の成果を測る指標にもなりますし、「体験格差を埋める事業」として申請している場合は、そのまま効果の根拠になります。

年によってメニューが変わっても、「1人あたりの初体験の数」という形にすれば比較できます。

注意点が一つあります。メニュー名を正式名称で書くと、子どもにも保護者にも伝わりません。「3Dプリンター」ではなく「立体をつくる機械(3Dプリンター)」のように、当日ブースで使っていた呼び方と同じ言葉にします。用紙だけ別の言葉になっていると、回答がぶれます。

設問2|もう一度やりたいか(子ども用・1問)

子どもに聞くのはこの1問だけで十分です。「またやりたい」「どちらでもない」「もういい」の3択にして、ふりがなを付けます。文字を書かせません。

この設問が効くのは、継続の見込みを示せるからです。満足度が高くても「もういい」が多ければ、体験が一度きりで閉じています。逆にここが高ければ、次回の事前登録や、継続的な事業への接続が説明できます。

「どちらでもない」を選択肢に残しておくのも大事です。2択にすると、迷った子が全員「またやりたい」に寄ります。真ん中があることで、はっきり「またやりたい」を選んだ数の意味が強くなります。

設問3|どこから来たか(3択)

市内、近隣の市町、それ以外。この3択だけにします。住所を書かせると、記入の手が止まりますし、個人情報の扱いが重くなります。

回答の傾向 読み取れること 次にやること
市内が大半 地域の行事として定着しつつある。広報は届いている 回数を増やす。会場を分散させる
近隣からも一定数 広域の集客力がある。観光・定住の文脈で説明できる 近隣自治体との共催を提案できる
それ以外が多い 地元に届いていない可能性がある。告知の経路を見直す 学校・児童館など、地元の既存の配布経路を使う

設問4|何で知ったか

告知の経路を検証する設問です。選択肢は実際に使った経路だけを並べます。使っていない経路を入れると、回答が分散して読めなくなります。

  • 学校で配られたチラシ
  • 施設・店舗で見たポスター
  • SNS(具体的なサービス名まで分ける)
  • 知人から聞いた
  • たまたま通りかかった

「たまたま通りかかった」を必ず入れてください。商業施設や寺社の境内で開催する場合、ここが大きくなることがあります。その場合、広報費をかけるより会場選びのほうが効いている、という判断になります。

設問5|次に知りたいこと(自由記述・1つだけ)

自由記述は1つに絞ります。「ご意見・ご感想」ではなく、「次にどんな体験があったら来ますか」のように、答えが次の企画に直結する聞き方にします。

自由記述を増やさない

自由記述が2つ以上あると、2つ目以降の記入率が大きく落ちます。また、集計の工数が跳ね上がります。報告書に載せられるのは結局いくつかの抜粋なので、設問を増やしても得られるものは増えません。

子ども用と保護者用は、紙を分ける

1枚に両方を載せると、ほぼ保護者が代筆します。代筆された子どもの回答は、保護者の感想になります。

子ども用3問・○を付けるだけ・ふりがな付き体験ブースの出口で、スタッフが手渡します。その場で書いて、その場で箱に入れてもらいます。
保護者用5問・うち自由記述1問待ち時間や休憩スペースで渡します。待っている時間は、むしろ記入してもらいやすい時間です。

紙とデジタル、どちらで取るか

方式 向いている場面 落とし穴
紙(その場で回収) 当日限りのイベント。回収率をいちばん高くしたいとき 入力の工数がかかる。筆記具とバインダーの数を読み違えやすい
二次元コード(その場で回答) 会場の通信が安定していて、滞在時間が長いとき 保護者がその場でスマートフォンを開かない。回収率が大きく落ちる
後日メールで依頼 事前登録で連絡先を取っている場合 当日の記憶が薄れる。回答が「全体の印象」になり、具体が消える

私たちは紙での回収を基本にしています。入力の手間はかかりますが、回収率が落ちると、どんなに良い設問も意味がなくなるためです。

回収率を上げる3つの工夫

回収率は、紙の質でも設問でもなく、当日の動線でほぼ決まります。配る人が決まっていて、書く場所があって、出す場所が見えている。この3つが揃っていれば、特別な声かけをしなくても集まります。

  1. 渡す人と渡す場所を決めておく「空いている人が配る」にすると、誰も配りません。体験ブースの出口担当が手渡す、と役割に書き込みます。
  2. 書く場所を作る立ったまま書ける高さの台を1か所置くだけで、記入率が変わります。バインダーでも代用できます。
  3. 回収箱を出口の導線上に置く受付の脇ではなく、帰る動線の正面に置きます。箱が見えないと、持ち帰られて終わります。

向かないケースと、私たちが外したこと

来場が数十名規模で、スタッフが全員の顔を覚えられる場合、アンケートより口頭で聞いたほうが情報量は多くなります。紙にすると、かえって距離ができます。規模が小さいうちは、終了後に運営側で振り返りを書き残すほうが有効です。

もう一つ向かないのが、体験の時間が極端に短い回です。1人あたり数分で回していく形式だと、出口で紙を渡す動作そのものが列を止めます。この場合は設問を2問まで落とすか、保護者用だけにします。運営の速度を落としてまで取る価値がある設問は、そう多くありません。

現場から

設問を10問近く用意した回がありました。協賛企業への報告、自治体への報告、次回の改善と、必要そうなものを全部足した結果です。回収率は目に見えて下がり、集まった分も後半が空欄でした。

翌回から5問に減らし、報告先ごとに「この設問がこの報告に対応する」と先に割り当てる形に変えました。設問を足したくなったときは、どれかを削ります。足すだけにすると、必ず同じことになります。

企画の段階で、設問を決めてしまう

アンケートを当日の1週間前に作ると、ほぼ失敗します。その時点では運営の準備で手一杯で、「とりあえず一般的な設問」を入れてしまうからです。

1. 企画書を書くときに、効果の指標を2つ決める来場者数以外に、何をもって成功と言うのかを先に書きます。
2. その指標が取れる設問だけを並べる指標に対応しない設問は、この時点で落とします。
3. 当日の導線に、配布と回収の担当を書き込む体制表に入っていない作業は、当日やられません。
4. 終了後1週間以内に入力まで終える紙のまま置くと、報告の直前まで触らなくなります。

集計を、報告書のどこに置くか

集計が終わっても、そのまま貼り付けると読まれません。報告書で見られるのは、たいてい最初の1枚です。そこに載せる数字を3つに絞り、残りは別紙に回します。

載せる場所 載せる内容 理由
1枚目 来場者数/1人あたりの初体験の数/「またやりたい」の割合 決裁者はここしか読まないことが多い。規模・中身・継続性が1行ずつで分かる形にする
2枚目以降 居住地の内訳、認知経路の内訳 次年度の広報と会場の判断に使う。現場側が読む数字
別紙 自由記述の全文、写真 原文は編集せずに残す。要約すると、次に読む人が判断できなくなる

数字の横には、必ず分母を書きます。「80%が満足」ではなく「回収◯枚のうち◯枚」。分母がないと、読む側は数字を信用しません。そして翌年、同じ分母の書き方をしていないと比較もできません。

個人情報と、写真の扱いを先に決める

アンケート用紙に名前や連絡先の欄を作ると、保管と廃棄の責任が発生します。次回の案内を送りたい場合でも、アンケートと連絡先の収集は紙を分けたほうが扱いが軽くなります。

用紙に1行だけ入れておくこと

「いただいた回答は、当日の振り返りと報告書の作成に使用します」。この一文があるかないかで、後から公開の判断に迷う量が変わります。ウェブに載せる可能性があるなら、その旨も同じ行に書きます。

写真の掲載許諾は、アンケートとは別に取ります。アンケートの欄に混ぜると、どちらの同意なのかが曖昧になります。

私たちがやっていること

デジタルキッズクラブは、教室を持たずに活動しています。イベントとしてのフェスと、学校や施設に機材ごと伺う出張ワークショップ、それにオンラインワークショップの3つです。愛媛・東京・千葉・愛知で開催していて、岐阜は現在ご提案中です。

拠点がない分、一回ごとに記録を残さないと何も積み上がりません。だからアンケートは、感想を集める紙ではなく、次の開催を説明するための材料として扱っています。2026年1月に本願寺名古屋別院で開催した回は、来場が約415名(子ども177名・大人238名)、運営体制が34名でした。この規模になると、口頭での把握は不可能になります。

デジタルキッズクラブの横断幕を掲げた会場
会場は毎回変わります。だから「前回と同じ条件で取れる設問」を少数だけ固定しています。

AI時代に、何を測るべきなのか

これから子どもに何が必要になるかの答えは、誰も持っていません。私たちも持っていません。ただ、AIが代わりにできない一次情報、つまり自分の手で触った経験や、そのときの感情や、人との対話の価値は上がると考えています。

そう考えると、測るべきは知識の定着ではありません。手を動かした回数と、もう一度やりたいと思ったかどうかです。この2つは、紙1枚で取れます。難しい指標を設計するより、この2つを毎回きちんと取り続けるほうが、結果的に説明しやすくなります。

協賛・自治体連携のご相談を承っています

自治体・企業の皆さまとの連携のかたちと、ご一緒できる範囲をまとめたページをご用意しています。効果測定の設計からご相談いただいても構いません。

協賛・自治体連携について見る

すでにご検討中の方は こちらから直接ご相談ください。

よくある質問

アンケートの設問は、いくつが適切ですか。

子ども用は3問以内、保護者用は5問以内をおすすめします。会場でその場で書いてもらう前提だと、記入にかけられるのは1分前後です。設問が増えるほど回収率が下がり、後半の回答が雑になります。設問を減らすほど、データとしての精度は上がります。

満足度を5段階で聞くのは意味がないのでしょうか。

意味がないわけではありませんが、報告の根拠としては弱くなります。楽しい場では満足度は高く出るため、ほぼ毎回4〜5に寄り、翌年と比較しても差が見えません。行動に近い設問(もう一度やりたいか、初めて触ったものはどれか)のほうが、判断材料になります。

子ども向けの設問は、どう書けばいいですか。

小学校1〜2年生が読める言葉に限定し、ふりがなを付けます。選択肢は絵や記号を併記し、記入ではなく○を付ける形にします。自由記述を入れる場合は1つだけにして、書かなくてもよいことを明記してください。

アンケートの結果は、どこまで公開していいですか。

集計値であれば問題になりにくい一方、自由記述の原文や、写真と組み合わせた公開は注意が必要です。写真の掲載許諾は別に取る必要があります。回収の時点で、何に使うか(報告書・次回の改善・ウェブ掲載の有無)を1行で明示しておくと、後から判断に迷いません。

紙とデジタル、どちらで取るべきですか。

当日その場で回収するなら紙が確実です。デジタルは集計が楽ですが、会場の通信環境と、保護者がその場でスマートフォンを開く手間に左右されます。私たちは紙で回収して、終了後に入力する形を基本にしています。

この記事を書いた人

デジタルキッズクラブ(運営:lanitech合同会社)/西脇 靖紘

デジタルキッズクラブ 代表。愛媛・東京・千葉・愛知で、子どもがデジタルの道具に直接手を伸ばす一日一日をつくっています。これまでに延べ1,000名以上の子どもと保護者に体験を届けてきました。愛知淑徳大学ではAI関連科目の非常勤講師も務めており、日々AI×教育と向き合っています。これら記事の内容は、私たちの現場での運営や観察にもとづいています。

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