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企業版ふるさと納税で子ども向け事業を組み立てる

企業版ふるさと納税で子ども向け事業を組み立てる

子ども向けのデジタル体験を地域でやりたい。ただし単年度の予算はつかないか、ついても足りない。そういう相談を受けたときに、候補として挙がるのが企業版ふるさと納税です。

この制度は、企業が寄附をすると法人関係税から税額控除される仕組みで、税の軽減効果は寄附額の最大約9割になります。企業の実質負担は約1割です。令和7年度の税制改正で、この特例措置は3年間(令和9年度まで)延長されました(内閣府地方創生推進事務局、2026年8月時点)。

ただし、制度が使えることと、事業が組めることは別です。私たちは体験を実施する側としてこの手の事業に関わってきましたが、詰まるのはたいてい制度の外側でした。順に書きます。

制度の骨格を、必要な分だけ

細かい解説は内閣府のポータルサイトにありますので、事業を組むときに効いてくる点だけ挙げます。

項目 内容
対象になる事業 内閣総理大臣が認定した地域再生計画に位置付けられた事業
寄附の下限 1回あたり10万円。内閣府の資料でも「低めに設定」と説明されています
軽減効果 寄附額の最大約9割(法人住民税4割・法人事業税2割・法人税1割+損金算入分)
本社所在地への寄附 対象外
寄附企業への見返り 禁止。経済的な利益を返すことはできません
適用期限 令和9年度まで(令和7年度税制改正で3年延長)

制度の流れは、自治体が地方版総合戦略を策定し、それを基に地域再生計画を作成、内閣府が計画を認定し、そのうえで企業が寄附をして税額控除を受ける、という順序です。

ここで実務上いちばん重要なのは、順番が「計画が先、寄附が後」であることです。企業を先に見つけても、受け皿となる認定計画がなければ寄附は制度に乗りません。

子ども向け事業を組むとき、先に要るもの

実施する側から見て、話が前に進む案件と止まる案件の差は、次の3点が決まっているかどうかでした。

1つ目は、地域再生計画のどこに位置付けるか。子どものデジタル体験は、教育の枠にも、産業人材育成の枠にも、移住定住の枠にも入りえます。どこに入れるかで、必要な成果指標が変わります。ここが曖昧なまま企業に持っていくと、企業側で判断できません。

2つ目は、単発なのか、複数年なのか。寄附は年度ごとに発生しますが、子どもへの効果は単年度では出ません。1回やって終わりの設計だと、翌年の寄附を頼む理由がなくなります。

3つ目は、誰が実施するのか。計画と予算があっても、当日の運営ができる主体がいないと事業になりません。機材の運搬、設営、当日の人員、撤収まで担える相手を、計画段階で見込んでおく必要があります。

見返りが禁止されている、という制約の意味

企業版ふるさと納税は、寄附企業への経済的な見返りが禁止されています。ここを誤解した設計が、いちばんよく持ち込まれます。

通常の協賛であれば、ロゴの掲出、ブースの出展、サンプリング、社名の読み上げといった対価を設計できます。企業版ふるさと納税ではそれができません。協賛メニューをそのまま流用しようとすると、制度から外れます。

ですので、企業に説明する筋は変わります。宣伝効果ではなく、地域とどう関わりたいかという話になります。実際、企業が子どもの学びに関わる動機は採用広報や宣伝であることは少なく、地域に事業所がある、社員の子どもが通っている、といった具体的な接点であることのほうが多いというのが、私たちの実感です。

うまくいかなかったこと

正直に書きます。私たちは自治体との連携を進めるなかで、はっきり止まった案件があります。

ある自治体との相談では、施設も補助金もスポンサーも含めて具体的なところまで話が進みました。しかし結論として出たのは、「初回から市の補助金で数十万円単位を確保するのは難しい」ということでした。行政側の予算は、実績のない事業に初年度からつけにくい構造になっています。

そこから出た方針は、順番を逆にすることでした。企業からの資金を先に確保して、実績をつくってから行政の予算に乗せる。企業版ふるさと納税は、この「先に企業」の局面で使える道具です。ただし前述のとおり、寄附を受けるには認定された地域再生計画が要ります。つまり、企業と行政のどちらか一方だけでは動きません。

もうひとつ、常設の施設を運営していた時期に学んだことがあります。地域に拠点を置いて無料で開放していましたが、来館は1日あたり数組にとどまり、続きませんでした。いつでも行ける場所は、行く理由になりません。予算を投じる先を決めるとき、ここは効きます。

数字で見た、実際の規模感

事業規模の見当をつけるために、私たちが自主開催したフェスの実額を出します。決裁の資料に使える数字はこのあたりです。

費目 金額 備考
当日人件費 約34万円 体制34名・日給1万円換算
事前練習 約15万円 30名×5,000円
事務局・制作 約9万円 チラシ・受付・記録
その他 13万〜16万円 材料費・運搬・保険など
概算総額 約73万円 子ども200名規模・1日開催の想定

この表でいちばん見ていただきたいのは、最大の費目が機材ではなく人件費だということです。デジタル体験というと機材費が大きいと思われがちですが、機材は使い回せます。効いてくるのは、当日その場に何人立てるかです。

自治体の事業として組む場合、私たちは規模に応じて、単年度の基本開催、体験数と体制を拡充する形、年複数回や教材化まで含める形の3段階でご提案しています。詳細は協賛・自治体連携のページに、実施できる体験の中身は出張ワークショップのページにまとめています。

向かないケース

次のような場合、企業版ふるさと納税を軸にするのはおすすめしません。

今年度中に実施したい場合。地域再生計画の認定を経る必要があるため、思い立ってから実施までの距離があります。今年度に動かしたいなら、既存の予算枠か、通常の協賛で組んだほうが早いです。

企業に対価を返したい場合。見返りが禁止されている以上、ロゴ掲出や出展枠を約束する設計はできません。それが必要なら、通常の協賛のほうが素直です。

本社所在地の自治体の企業しか当てがない場合。本社が所在する自治体への寄附は対象外です。地元企業だけを想定していると、そもそも寄附先になれません。

まとめ

  • 制度は令和9年度まで延長され、企業の実質負担は約1割です
  • 順番は「認定された地域再生計画が先、寄附が後」です
  • 計画のどの枠に置くか、単年度か複数年か、誰が実施するかを先に決めます
  • 見返りは禁止なので、協賛メニューの流用はできません
  • 費用の最大項目は機材ではなく人件費です

制度の詳細は内閣府地方創生推進事務局の企業版ふるさと納税ポータルサイトが一次情報になります。本記事の制度に関する記述は2026年8月時点のものです。実施側として何ができるかについては、いつでもご相談ください。

この記事を書いた人

デジタルキッズクラブ(運営:lanitech合同会社)/西脇 靖紘

デジタルキッズクラブ 代表。愛媛・東京・千葉・愛知で、子どもがデジタルの道具に直接手を伸ばす一日一日をつくっています。これまでに延べ1,000名以上の子どもと保護者に体験を届けてきました。愛知淑徳大学ではAI関連科目の非常勤講師も務めており、日々AI×教育と向き合っています。これら記事の内容は、私たちの現場での運営や観察にもとづいています。

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子ども向けのデジタル体験を、自治体の事業として組み立てる際の実施側を担っています。事業規模ごとのメニューと、実際にかかる費用の内訳を公開しています。

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